ServiceNow Japanは7月10日、今回で2回目となる「Enterprise AI Maturity Index 2025(2025年度版 企業のAI成熟度指数)」の日本語版を公開した。
同報告書では、AI活用の成熟度を5つの指標で評価し、AI先進企業を表す「先駆者」とそのほか企業の差を明確に示しているという。なお、世界と比較した日本の状況は、調査項目によって多少のばらつきはあるものの、おおむね世界の平均レベルという結果になったとしている。
AIイノベーションの急速な進行によって、AI成熟度が全体的に低下
今回の調査では、企業のAI成熟度スコア(100点満点)がグローバルで前年の44ポイントから35ポイントへと9ポイント低下。(日本は、前年の43ポイントから33ポイントへと10ポイント低下)。また、50ポイント以上を獲得した組織は1%未満にとどまり、最高得点も前年比13ポイント減の58ポイントになったという。しかしながら、この低下はAI活用に関する取り組みの後退を示すものではなく、エージェンティックAIなどの新たなテクノロジーが変革を次のレベルに引き上げつつある中、そのAIイノベーションの速度が組織の効果的な展開能力を上回っていることを示すとのことだ。
全体的なAI成熟度のレベルは低下したが、調査対象のほぼすべての組織において、AIは有意義な成果を生み出しているという。調査対象組織の3分の2以上(67%)が、AIによって組織の売上総利益が向上したと回答。経営層が示したその増加率は全体平均で11%。ユースケースにかかわらず、AIによってほとんどの組織がROI(投資対効果)を実現し、ほぼ半数が検索機能、分析AI、プロセスAI、予測ツールについて「大きな」ROIを得たと報告しているとした。経営層の予測では、組織のAIへの投資は来年度に平均で約8.6%増加するとのことだ。
2025年は、エージェンティックAIの黎明期
自律的に行動して定義された目標を追求する「エージェンティックAI」について、現在試験導入段階に到達している組織は、約3分の1(日本も同様)にとどまっているという。しかし、エージェンティックAIの実装を開始した組織では、既に成果を得ており、その主なユースケースには、セキュリティリスクへの対処や、内部システムの監視や操作があるとしている。今後の展望に目を向けると、経営層の43%(日本:50%)が今後12ヵ月以内の導入を検討しており、組織全体の生産性を向上させる可能性が期待されているとした。
![[画像クリックで拡大]](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/22353/1.png)
先駆者企業の5つの戦略
「先駆者」と呼ぶエリートグループは、ほかのグループを上回るパフォーマンスを示しているという。2025年のAI成熟度スコアの平均は35ポイントだったが、先駆者の平均スコアは44ポイント。スコアが50ポイントを超えたのは調査対象のごく一部で、サンプルのうち1%未満だったという。最も高いパフォーマンスを示した組織のスコアはわずか58ポイントで、最も先進的な組織でさえ、まだAI変革の初期段階にあるとのことだ。先駆者は調査対象組織の18%だが、先駆者のロードマップを採用することでほかの組織が差を詰め、先駆者になることもできると同社は述べる。ServiceNowが作成した経済モデル分析によると、Forbes Global 2000企業すべてが先駆者レベルのAI統合を実現した場合、1社あたり5600万ドル、全体で1130億ドルの売上総利益が増加する可能性があるとしている。同調査では、先駆者企業が採用する次の戦略が明らかになったという。
- イノベーションのマインドセットでのリード:先駆者組織の56%(日本:46%)がAIのビジョンを策定しているのに対して、そのほかの組織では30%(日本:23%)。また、先駆者組織では経営層がAIによる変革に積極的に関与しているとした回答の割合が58%(日本:46%)だったが、そのほかの組織では33%(日本:26%)であったとしている
- プラットフォームアプローチの採用:先駆者組織の66%(日本:79%)が組織全体でAI機能が組み込まれたプラットフォームアプローチを採用しているのに対し、そのほかの組織では46%(日本:53%)になったという。このアプローチにより、先駆者は、新しいテクノロジーやアプリケーションが市場に登場するたびに土台から構築しなおす必要がなくなり、エージェンティックAIなどの新しいAIツールを大規模に採用しやすくなるとのことだ
- 人材重視:先駆者組織の50%(日本:48%)が、AI戦略の実行に適した人材がそろっていると回答しているのに対し、そのほかの組織では29%(日本:18%)だったとしている
- AIガバナンスの優先:先駆者の63%(日本:50%)がAIに特化したポリシーを活用してデータガバナンスとセキュリティの課題への対処において大きな進歩を遂げているのに対し、そのほかの組織では42%(日本:37%)だったという
- エージェンティックAIは36%が現在使用中:先駆者組織では36%(日本:25%)が現在エージェンティックAIを使用しているのに対し、そのほかの組織では19%(日本:14%)になったという。先駆者組織は、エージェンティックAIへの投資から、既により優れたROIを実現しており、カスタマーサービスやカスタマーエクスペリエンスの改善、効率や生産性の向上、収益の拡大などの成果を上げているとした
先駆者比率の業界・地域別動向
業界別では、テクノロジー関連組織で先駆者比率が32%と最高値を記録したという。地域別では、インド(31%)、アメリカ(22%)、オーストラリア(21%)が上位を占める一方、スペイン(10%)、イタリア(10%)、フランス(8%)が下位となったとしている。日本は16ヵ国中、8位(16%)になったとのことだ。
![[画像クリックで拡大]](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/22353/2.png)
![[画像クリックで拡大]](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/22353/3.png)
なお、同調査は、世界16ヵ国の経営層、シニアディレクター、ディレクターを含む4,473人を対象に実施され、日本からは305人が参加。英調査会社Oxford Economicsとのパートナーシップにより、ServiceNowが調査・分析を行ったとしている。
【関連記事】
・エージェンティックAIなど台頭するも、マシンIDセキュリティの意識依然低く──CyberArk調査
・勤務先の生成AI導入状況、「わからない」がほぼ半数 情報共有不足と環境整備に課題──マクロミル調査
・アシスト、「生成AI基礎力養成コース for AWS」を提供 AI人材を育成し、業務負担の軽減を支援
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア