アビームコンサルティングは、日本におけるデジタル技術を活用した変革への取り組みの実態を把握し、DXの成功と失敗の分岐点を明らかにすることを目的として、年間売上1,000億円以上の企業のDX推進の意思決定に関与する部長職以上の役職者(515名)を対象に、DXに関する最新調査を2020年10月~11月に実施した結果を発表した。
調査結果の概要
DXの取り組みテーマに関して、現在取り組んでいるテーマと最も重要だと考えるテーマについて調査したところ、①新規事業の創出(25%)、②顧客接点デジタル化(14%)、③新サービス・製品開発(13%)の順に重要であると考えており、実際に、重要だと考えるテーマに取り組んでいることがわかった(図1)。
日本の多くの企業は、新たな事業の柱となる新規事業開発や既存事業の収益性を高めるための既存事業のビジネスモデル変革、効率化に資するRPAやオペレーション変革・コーポレート機能の高度化に取り組んでいる。デジタルを活用して事業をスケールさせることや、新たな事業の柱を構築し、事業ポートフォリオを変革することが、多くの企業にとって重要な課題となっているという。
一方、テーマに関わらず、DXに成功しているのは約7%であることが判明した(図2、図3)。そもそも企業における変革プロジェクト自体の難易度が高い上、システム導入やプロセス変革にとどまらず、事業の変革、リソース配分、新たな体制の構築などこれまでとは異なる次元の変革も必要となり、DXの難易度の高さがうかがえるとしている。
また、企業がDXを推進する上で必要な5つの観点から、自社の取り組みの達成度を調査したところ、成功した企業と失敗した企業を分ける要因のうち特に着目すべきは、「全社員へのデジタル教育」、「デジタル知見を有した経営陣による意思決定」、「デジタルとビジネス・業務知見を有した推進組織の組成」であり、それらがDXの成功と失敗の分岐点であることが明らかになった(図4)。
アビームコンサルティングが考えるDX成功の5つの要因
本調査で判明したDXの成功と失敗の3つの分岐点と、日本企業のDX推進支援で培ってきた知見やノウハウから、DXの成功確率を高めるためには、下記の5つの要因が重要であると考えた。
1.明確なDXビジョン
「いつまでに」、「何を」、「どういった状態にしたいのか」、「そのための何をすべきなのか」をビジョンとして具体的に描き、部門ごとのロードマップや目標値までブレイクダウンする必要がある。
2.思い切ったヒトとカネの投資
変革のためには一定リスクをとってリソースの配分が必要である。必要に応じて社外の活用やアライアンスを組んで進めるといった、企業としてのコミットメントが必要となる。
3.デジタル知見を有した経営陣の覚悟
経営陣が推進体制の責任者となり、事業、ビジネスモデル・プロセス、オペレーションといったあらゆる変革の取り組みに対して、意思決定をしなければならない。また意思決定をする経営陣のデジタルリテラシー向上を最優先に据える必要がある。
4.アジリティとダイバーシティのある組織
取り組みを試験的に始め、必要に応じて適宜変更するとともに、自社内のナレッジだけに依存せず最新のトレンドや他社事例を踏まえながら、自社にとって最適な解を探していく必要がある。
5.デジタル教育と変革の意識付け
経営陣、推進メンバー、現場全体にデジタル教育がなされ、他企業の取り組みやデジタルがもたらす可能性や及ぼす影響の理解を深めるとともに、推進するためには現場の巻き込みが欠かせない日本企業の特性を考慮し、様々な手法を活用した丁寧なコミュニケーションが必要となる。
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