ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は、国内企業のアプリケーション戦略に関する最新の調査結果を発表した。
ガートナーは2020年6月、企業内個人を対象に新型コロナウイルス感染症対応において浮き彫りになった、業務アプリケーションの問題点と関連プロジェクトへの影響に関する調査を実施した。
新型コロナウイルスへの対応にともなって顕在化した課題について尋ねたところ、選択率の上位3項目として、「自宅/社外から利用する際に性能(安定性、容量、速度など)が不十分である」(41.4%)、「(紙や印鑑による)書類処理のため、出社や対面での対応が必須である」(37.1%)、「様々なデバイス(PC、スマホ、タブレット端末など)に対応していない」(23.9%)が挙げられた。
また、上記を含む業務アプリケーションの問題点を踏まえ、それらを解消する上で業務アプリケーションに期待する改善策を尋ねたところ、選択率の上位3項目には、「テレワーク利用時の性能(安定性、容量、速度など)の確保・向上」(53.9%)、「(スキャン、文字認識、電子署名などの機能による)電子化/ペーパーレス化の促進」(42.4%)、「クラウドやモバイルによるテレワーク対応の拡充」(34.0%)が続いた(図1参照)。
今回の調査では、テレワークの本格化に向けて、業務アプリケーションを利用する際の性能改善という喫緊の課題が浮き彫りになった。企業のITリーダーは、業務上重要なアプリケーションについて、テレワーク時に性能面で問題が出ていないかを確認し、出ている場合は、その問題がインフラなどの環境要因によるものか、それともアプリケーション自体のアーキテクチャや設計に起因するのかを切り分け、速やかに対処すべきだという。
ガートナーはまた、2020年5月にITユーザー企業に対して、主要な業務アプリケーションの刷新や近代化の必要性について尋ねたところ、回答者の約7割(69.2%)の企業が、アプリケーションの刷新や近代化の必要性を感じていることが明らかになった。この割合は、従業員数1,000人以上の大企業になると8割を超えており(84.4%)、特に大企業では抱えているレガシー・アプリケーションの存在が喫緊の課題になっている現状が浮かび上がったとしている。
8割弱の企業にはアプリケーション戦略がない
同調査では、アプリケーション戦略の有無も尋ねた。回答企業全体で見ると、ビジネス戦略と合致しているかどうかにかかわらずアプリケーション戦略が「ある」と回答した企業は、25.5%だった(図2参照)。同じ結果を従業員数の規模別に見ると、従業員数1,000人未満では約2割(22.0%)、1,000人以上では半数弱(44.7%)となっている(図3参照)。
アナリストでシニアディレクターの片山治利氏は、「従業員数1,000人未満の企業では、アプリケーション刷新の必要性を感じている割合が小さいため、新たなアプリケーション戦略を策定する必然性も少ないと想定されます。加えて、1,000人未満の企業は人手不足に陥っている場合が多いため、自社アプリケーションの問題などを考える人材がいないという可能性も考えられます。一方、1,000人以上の大企業は、アプリケーションへの依存度も高く、アプリケーション戦略についても真剣に考えていそうであるにもかかわらず、過半数は戦略を有していないことになります。既存アプリケーションに刷新の必要性を感じる大企業が多かった状況と考え合わせると、これは由々しき事態であるといえるでしょう。アプリケーション・リーダーは、コロナ禍がもたらした未曾有の環境変化を変革の契機にできるよう、手遅れにならないうちに、自社のアプリケーション戦略の策定や見直しに着手すべきです」と述べている。
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