アクセンチュアはCFOの役割に関する調査をおこない、その結果を調査レポート『CFO Now: Breakthrough Speed for Breakout Value』にまとめた。それによると、CFOは、企業の「経理・財務の守り役」という立場を超え、「事業価値のアーキテクト」や「デジタル戦略の媒介者」へと変わるべきだという。
2月24日にアクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部 Enterprise Valueマネジメント プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクターの山路 篤氏がオンライン記者会見で以下の内容の報告をおこなった。調査対象は売上10億ドル規模以上のグローバル企業1,300名を超える財務リーダー、うち日本企業の対象者は115名。
経理業務自動化は予想以上に進展も、財務分野へのクラウド活用は低い
現在、経理・財務業務の60%が自動化されている。2018年時点でCFOが2021年までに従来の経理・財務タスクの45%が自動化されているだろうと予測した値を上回る結果となった。しかし、過去2年間に高度な財務モデリングを使用し、将来のリスクや機会を特定していると回答したCFOは、半数以下の43%にとどまり、クラウドを活用したと答えたCFOはわずか23%で、クラウドを活用し、新たな価値の源泉を特定したと回答したCFOもわずか16%にとどまった、
高成長企業ほどテクノロジー活用度高く、「データ駆動型経営管理モデル」構築
また高成長企業ほど、CFOがテクノロジーを“業績目標達成”や“成長力強化”に活用していることが判明。またグローバルに比べ、日本企業の方がテクノロジー活用による成長性への差は大きく、日本企業の場合「CFOのデータガバナンス権限」「経理部門への分析専門人材の補完 」「経理メンバーの事業理解度」が大きな成長差の要因だという。
さらに高成長のテクノロジー活用企業では、“活用の程度”ではなく“活用目的”が競争力につながっているという結果が見られた。データを武器に、経理部門が事業にまで介入する『データ駆動型経営管理モデル』を採用し以下の取組みをおこなっている。
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全社のデータの統合:グローバルで共通化されたデータの集約、経理・財務だけではなく、他部
署が保有するR&Dやマーケティングデータまでを統合 - 分析へのテクノロジー活用:分析・レポートにおける新興技術の評価・導入
- 事業判断への介入:事業やCXOへの、パーソナライズした洞察の提供、データに基づく予測
経理部門とデータ分析リームとの連携、人材投入が重要
調査結果にもとづき、CFOは自らをChief Data Officerと位置付けて、全社の旗振り役を担うべきとし、その役割について指摘した。
- CFOがデータガバナンスに対する責任と権限を持ち、社内隅々のデータを集約・統合すること
- CFO配下に、業績管理の専門家とデータの専門家を配置し、全社横断の取り組みとして推進すること
- 事業を深く理解したFinanceチームを育成すること
こうした取り組みの事例として、アクセンチュアの関わる製造業企業では、システム・データを統合した上で、経理部門に分析ケイパビリティを導入。結果、約10ポイントの営業利益向上効果を予定しているという。
今あるデータで価値を創出する「実践先行型アプローチ」が重要
従来型の長期の開発期間をともなう全社データ統合によるアプローチではない、経営効果の早期創出型アプローチの重要性を示唆した。当初はExcel/SQLベースなどの簡易ツールを用い、手作業も含めたデータ統合による分析環境を整えることから始める実践先行型アプローチを推奨するという。
ESG投資については未着手、取り組みは今後の課題
ESGへの関与に関しては、業績の好不調に関わらず、課題認識は大きいものの、これまでは十分に貢献が出来ていなかったことが判明。すべての企業において、ESGの経営への組み込みは今後の重点取り組み課題となるという。