6月29日、アドビジャパンの神谷知信氏が社長就任後初となる報道関係者向け事業戦略説明会を行った。
今年4月に代表取締役社長に就任した神谷知信氏は、2014年10月のアドビ入社後、Creative CloudとDocument Cloudを含むデジタルメディア事業を統括してきた。デスクトップから、クラウド・サブスクリプション化というアドビのDXをリードし、成功に導いた経歴の持ち主。アドビ入社前はディーアンドエムホールディングス(現サウンドユナイテッド)、日本AMD、デルジャパン(現デル・テクノロジーズ株式会社)などを経ている。
グローバルでのアドビの業績は絶好調のようだ。Covid-19後の米国のデジタルの市場の隆盛を背景に、3年後の獲得可能な最大市場規模(Total Addressable Market)を2019年の12兆8,000億(JPY)から、2020年12月には14兆7,000億(JPY)と大幅に引き上げた。中でも来年30周年を迎える日本法人としての貢献度は大きく、グローバルで第二位の位置づけで展開しているという。
こうした好調な業績を牽引しているのは、「Adobe Creative Cloud」、「Adobe Document Cloud」、「Adobe Experience Cloud」などの製品群だ。この成長の起爆となったのは、アドビ自身が2011年にパッケージからサブスクリプションに移行したことだが、神谷社長はこの転換を「アドビ自身のDX」と称した。
神谷氏が掲げたのは、「心、おどる、デジタル」という、アドビの国内における新たなビジョン。このビジョンは「Digitalize」、「Delight」、「Amaze」、「Foster」の4つの要素で成り立っており、注力テーマは以下の3つだという。
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テクノロジー:Creative Cloud、Experience Cloud、Document Cloudの3つの分野において、コンテンツとデータ、デジタルなワークフローに注力し、顧客体験の変革を実現する。
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エコシステム:パートナーとの協業により、日本の企業が抱えるあらゆるDXの課題にスムーズに対応。また、デジタルにおける顧客体験の向上が重要な経営課題となっていることから、アドビは今年3月にグローバルの顧問評議会「International Advisory Board」を設置。慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏のほか、世界中の有識者が参画。
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人材と組織:各業界、組織に適した専門性を持つ支援チームを組織し、日本のアドビ社員が直接対応。さらにコンサルティングサービスを強化し、ソリューション中心ではなく、DX戦略の策定からシステムの設計・開発、人材育成、運用・業務の定着まで一気通貫で支援する。
また近年のマーケティングやコマース(EC)、データ・アナリティクスなどのエンタープライズの分野とクリエイティブ・コンテンツ領域のシナジーについても注力し、デジタル化されたワークフロー、紙からデジタルに書類を変革しデジタルで完結させるためのソリューションを通じて実現していくという。