矢野経済研究所では、調査テーマについて次のように定義している。
・BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング):通常企業内部にて行われるシステム運用管理業務、コールセンター系業務(コンタクトセンター、ヘルプデスク、フルフィルメント)、間接部門系業務(人事、福利厚生、総務、経理)、直接部門系業務(購買・調達、営業、コア部門単純業務、業界固有業務)などの業務を発注企業から業務委託を受けて代行するサービス。
ただし、従来から外部に委託することが一般的な、税務、物流、情報システム開発、ビルメンテナンスなどの専門的な事業所向けサービスに関しては対象外とする。
・IT系BPO、非IT系BPO:IT系BPOとは発注企業からシステム運用管理業務を委託され代行するサービスとし、非IT系BPOとはその他の業務を委託され代行するサービスとする。
・クラウドソーシングサービス:インターネットを介在として、業務委託者側である企業等と業務受託者側である不特定多数の労働者等をマッチングするサービスをさす。本調査におけるクラウドソーシングサービス市場規模は、クラウドソーシングシステム上での業務委託企業による仕事依頼全般(成約に至らなかった仕事の依頼全般も含む)の総額から算出。
IT系BPO市場――2014~2020年度の年間平均成長率は3.1%
BPO全体の2014年度~2020年度までの国内市場規模は、年平均成長率(CAGR)2.2%で推移し、2020年度には4兆1,136億9,000万円(事業者売上高ベース)に達すると予測する。BPOのうち、IT系BPOの2014年度~2020年度の国内市場規模は、年平均成長率(CAGR)3.1%で推移し、2020年度には、2兆4,174億円に達すると予測する。
IT系BPO市場におけるシステム運用業務は専門性が高く、簡単に内製化できる業務ではないため、新規参入事業者の少ない、比較的安定的な市場環境となっている。また、データセンターへの投資額が大きいため参入障壁が高く、高単価を維持しやすいことも安定要因の1つとなっている。
こうしたことから、IT系BPO市場は非IT系BPO市場よりも高い成長率を維持し、今後も安定的に推移すると予測する。
非IT系BPOの導入時において、コスト削減効果や業務改善効果を最大化するためにはシステムの導入が不可欠になってきている。このため、非IT系BPOにIT系BPOが付加される形で提供されるケースが増えていることも成長要因の背景にあるものと考える。
非IT系BPO市場――2014~2020年度の年間平均成長率は1.1%
一方、非IT系BPOの2014年度~2020年度の国内市場規模は、年平均成長率(CAGR)1.1%で推移し、2020年度には、1兆6,962億9,000万円に達すると予測する。
非IT系BPOは、異業種参入の増加による価格競争の激化というマイナス要因こそ存在するが、人材不足の影響によって、企業が外部リソースに頼る傾向は強まっている。特に利用が増えているのは中核(コア)業務をサポートするBPOサービスである。
2016年度は、中小企業や個人事業主、保険会社における契約者のマイナンバー収集など、マイナンバー制度に対応したBPOサービスの利用が本格的に進むほか、2015年の労働者派遣法の改正や2018年4月から始まる労働契約法の5年転換ルール(無期転換ルール)の影響により、BPOサ ービスに切り替える企業も増えてきているため、前年度比1.1%増になると見込む。
2017年度は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた事業展開のための人材確保や少子高齢化の進展による労働力不足を補うことを目的とした人材確保の必要性から、BPOサービスが進むと考える。さらに、銀行業界においては顧客の預貯金口座へのマイナンバー紐づけが2018年から可能となる予定であるため、一部の銀行がマイナンバー対応BPOサービスを導入する可能性がある。加えて、2016年度に引き続き、中小企業や個人事業主などにおけるマイナンバー収集などの需要があるものとみる。
2018年度以降は、外資系企業の日本市場参入などに伴うアウトソーシング需要が見込まれるなか、グローバル標準に対応したBPOサービスを中心に利用が増加していくと予想でき、微増ながらも堅調に推移していくと予測する。
また、マイナンバー対応BPOサービスに関しては、証券口座保有者などのマイナンバー収集業務は収束していくものの、現在、法整備に向けた議論が進む2021年度のマイナンバー紐づけ義務化に向けたマイナンバーの収集需要が期待される。また、今後はマイナン バーの民間活用も期待されており、その進捗度合いが更なる市場の成長に向けたキーポイントになると考える。
クラウドソーシングサービス市場――2013~2020年度において年平均成長率45.4%で推移
新しい業務委託形態であるクラウドソーシングサービスが注目されている。現下、クラウドソーシング事業者、および業界団体である一般社団法人クラウドソーシング協会の活動により、クラウドソーシングサービスへの信頼が高まってきている。
また、事業者各社が大手企業向けのサービスを開始していることに加え、将来的に電子契約が浸透し、大手企業が懸念するコンプライアンス(法令遵守)への不安が解消されると見込まれることから、大手企業による大口案件の流通量が増加していくと想定され、引き続き高い伸びを示していくと予測する。
また、海外の大手クラウドソーシング事業者が日本市場に参入してくる可能性もあり、さらに市場が活 発化することも想定される。ただし、海外事業者による参入に際しては、日本語対応や法制度への対応などが障壁となるため、国内事業者との協業などが必要になってくる可能性があるものと考える。
2016年度のクラウドソーシングサービス国内市場規模(仕事依頼金額ベース)は、前年度比46.2%増の950億円となる見込みである。また、2013年度~2020年度において年平均成長率(CAGR)45.4%で推移、2020年度には、2,950億円に達すると予測する。