モノクロプロダクションプリンターの需要は底堅い
プロダクションプリンター全体の国内出荷台数は、前年同期とほぼ同数の約1,610台だった。市場全体の7割以上を占めているカラープロダクションプリンター(レーザー方式)は前年同期比2.7%減の1,150台、モノクロプロダクションプリンター(同上)は同9.2%増の450台、高速インクジェットプリンターは前年同期と同じ7台だった。
2017年第1四半期にカラープロダクションプリンターが前年同期よりも減少した理由は2015年、2016年と増加が続いていた反動によるものと考えられ、今後、出荷台数は再び増加に転じると考えている。一方、モノクロプロダクションプリンターの増加は置換需要によるものと考えられ、依然としてモノクロ印刷の需要は底堅いとみられる。
プロダクションプリンター市場では、オフセットやグラビア印刷といったアナログ印刷からプロダクションプリンターによるデジタル印刷へのシフトが見られるものの、印刷市場全体に占めるデジタル印刷の割合は現在、まだ非常に小さいと考えられる。しかし、可変データや少量印刷が可能なデジタル印刷は、企業における印刷物の内製化や、少量多品種短納期の印刷を可能にするため、プロダクション市場は今後拡大していくと期待される。
プロダクションプリンターの出荷台数では、富士ゼロックスとリコーが大きなシェアを持っており、この2社で85%以上を占めている。上位5社のうち、富士通を除く4社(富士ゼロックス、リコー、コニカミノルタ、キヤノン)すべてがオフィス向けレーザーMFP(Multi-Functional Peripheral)ベンダーだ。
今後オフィス市場ではドキュメントワークフローやビジネスプロセスの見直しにより、プリント出力が徐々に減少し、オフィス機器の出荷台数も減少していくことが予測されている。このような状況の下、これらのオフィスレーザーMFPベンダーは市場拡大が期待できる市場として、プロダクションプリンターに注力している。
今後も高速インクジェットプリンターによる印刷は増加か
現在、プロダクション市場は上述のとおり7割以上をレーザープリンターが占めているが、高速インクジェットプリンターはランニングコストや印刷速度で優位であり、印刷品質が向上している。また、高速インクジェットプリンターの製品数も徐々に増加し、さらにオフセットコート紙への印刷が可能なインクが登場するなど用紙対応力が向上しているため、レーザープリンターによる印刷の一部を置き換え始めており、今後も高速インクジェットプリンターによる印刷は増加すると考えられる。さらに、高速インクジェットプリンターは、レーザープリンターでは印刷できなかった布や木材など紙以外への印刷の可能性もある。
IDC Japan イメージング,プリンティング&ドキュメントソリューション シニアマーケットアナリストである三谷智子氏は「デジタル印刷では、可変データ印刷、一部ずつ内容が異なる印刷や少量印刷が可能である。またオフィス用紙以外への印刷も拡大している。ベンダーは、デジタル印刷の特性を生かして紙とデジタルを組み合わせたマーケティングや、紙以外の布や木材などへの印刷といった新たな用途の開拓を行い、ユーザーに提案していくことが必要である」としている。
今回の発表は、IDCが発行したデータ製品「国内プリンター市場 2017年第1四半期の分析と2017年~2021年の予測」と「国内MFP市場 2017年第1四半期の分析と2017年~2021年の予測」にその詳細が報告されている。