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クリステンセンのイノベーション論をめぐって

2012/07/03 07:00

クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』は、破壊的な技術変化に合理的に対応しようとする優良企業が必然的に失敗することを指摘した。本稿では破壊的イノベーションのアイデアを発見することに加えて、その実現を可能にする組織の資源配分プロセスにあらためて目を向けるとともに、クリステンセンのイノベーション理論の今日的意義について考察する。

クリステンセンのイノベーション理論―持続的/破壊的技術の議論を超えて

 クリステンセンの1997年の著書『イノベーションのジレンマ』は、既存企業が破壊的技術に直面し合理的に行動すればするほど新興企業に破れてしまうというロジックを鮮やかに提示し、ビジネス界にセンセーションを巻き起こした。多くの経営者が愛読書の一つとして本書を挙げており、Appleの故スティーブ・ジョブズも非常に大きな影響を受けたといわれている。本書の登場はまさにインターネットが急速に普及して数多くのベンチャーが誕生していた時期であり、Amazonは1995年に、Googleは1998年に創業され、破壊者として今も既存企業に脅威を与え続けている。それではどうして顧客の声を真摯に聞く優良企業が必然的に優位性を失ってしまうのだろうか。

 破壊的技術は、既存の顧客がその時点では求めていない技術である。長期的には重要になる可能性があったとしてもその時点ではそれが認識されていないため、企業は顧客ニーズのないところに投資を行うことができない。このため企業が積極的に投資を行うのは既存顧客が求める持続的技術のみとなってしまうのだ。

 このような展開を想定する際、時間軸に沿って技術と市場の変化をおさえることが重要である。当初は大きなニーズのなかった破壊的技術は次第にハイエンド化していき、既存顧客のニーズをも満たすようになるが、その際に持続的技術の性能向上のペースが市場変化のペースを上回り、顧客が必要とする水準を超えるオーバースペック状態となってしまうことがある。この結果これまで主流の市場では見向きもされなかった破壊的技術が市場を塗り替えていくという事態が生じるのである(図1)。

図1:ローエンド型破壊と新市場型破壊

 既存企業におけるビジネスパーソンはこうした破壊的技術に対抗していくにはどうしたら良いのかという問いが突きつけられる。筆者の理解では大きく二つの方向性が模索されたと考える。第一は「破壊的イノベーションの芽をどのように探索・発見するか」というマーケティング志向のアプローチであり、第二は「破壊的イノベーションを可能とするための意志決定や資源配分のあり方を組織的にどう実現していくか」というアプローチである。

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著者プロフィール

  • 杉本 幸太郎(スギモト コウタロウ)

    株式会社アウトロジック 代表取締役 1995年NTT(日本電信電話株式会社)入社。法人営業等を経て、1998年からNTTグループのシンクタンクに出向し海外調査や戦略分析、新規事業コンサルティングを担当。 2006年に独立し、情報通信・ハイテク分野におけるトレンド調査やイノベーション戦略分析、...

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