前回と前々回、「つくることによって学ぶ」ことを支援するパターン・ランゲージ「ラーニング・パターン」を紹介した。今回は、そのラーニング・パターンを用いて、自らの学びをデザイン(設計)する方法を紹介する。組織のメンバーが「つくることによって学ぶ」ための学びのデザインをする組織は、各自の成長を実感しながら、いきいきと活動を展開することになる。それが組織を創造的な体質に変える「クリエイティブ・シフト」(Creative Shift)の基盤となる。今回は、実際の事例も交えて紹介していく。
自分で自分の学び方をデザインする
変化が激しい時代においては、各人が知識やスキルを高め続けていくことが必要となる。しかも、何かを学ぶために特別に時間をとって勉強するというよりも、何かを「つくる」実践のなかで学ぶ —— つくることによって学ぶ —— ことが重要となる。そこで、自分がどうやって「つくることによって学ぶ」のかを考える必要が出てくる。
しかし、翻ってみると、これまで「学び」はいつも「教育」とセットで捉えられてきたため、多くの人にとって、自分の「学び方」について意識的に考える機会はほとんどなかったはずである。それゆえ、つくる実践のなかでどのように学ぶのかを自分で考えよと言われても、どうすればよいのかわからないというのが正直なところだろう。私たちには、自分で「学び方」をデザイン(設計)するための方法が必要なのである。
そこで、今回は、ラーニング・パターンを用いた学びのデザイン(設計)の方法を紹介したい。ラーニング・パターンを用いた学びのデザイン(設計)では、40個のラーニング・パターンを用いて、これから自分がどのような学び・成長をしたいのかを文章で記述していく。何の支援もなしに「学び方をデザインする」というのは難しいが、ラーニング・パターンの40パターンがあれば、それらを発想の糧にしながら、自らの学び方を形づくることが可能になる。
それでは、ラーニング・パターンを用いた学びのデザインの具体的方法について、実際の事例を取り上げながら、紹介していきたい。

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井庭 崇(イバ タカシ)
慶應義塾大学総合政策学部准教授。博士(政策・メディア)。専門は、パターン・ラン ゲージ、システム理論、創造技法。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院 Center for Collective Intelligence 客員研究員等を経て、現職。編著書・共著書に『複雑系入門――知のフ...
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