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週刊DBオンライン 谷川耕一

グループウェアに加えkintoneがもう1つのクラウドの柱に―サイボウズの戦略を読む


先週のバレンタインの日、サイボウズが2012年12月期の決算および事業説明会を開催した。16期となったこの期から、決算時期を1月末から12月末に変更している。その理由の1つが、今後の海外進出を考慮すると、欧米企業で一般的な12月末決算にしたほうが都合がいいから。つまりは、サイボウズの青野社長、海外へのビジネス展開が確実に視野に入っているわけだ。あまり元気のない日本のIT業界において、なんとも頼もしい存在と言える。

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青野社長

 そんなサイボウズの昨期決算は、決算時期変更で11ヶ月と短い。12ヶ月換算すると、前年比105.8%と増加した。残念ながら利益のほうは、前期が15.8%あったのに対し12.0%へと減ってしまった。売り上げについては、同社がパッケージ製品売りのビジネスからクラウドサービスへと大きくシフトした年であり、その中では堅実なビジネスを行えたことになるのだろう。

 クラウドに軸足を移しても、主力であったパッケージ製品の売り上げが下がらない。このことが分かったのは収穫だと、青野社長も指摘している。当初は、同社の既存パッケージ製品の顧客がクラウドにシフトすると予測していた。そのため、ライセンス売り上げは一時的に縮小するのではと考えていた。これが蓋を開けてみれば、クラウドの顧客の多くが、他社クラウドからの乗り換えやまったくの新規顧客だったのだ。なので、パッケージのビジネスはほぼ横ばいで推移し、クラウドぶんがプラスに影響することに。

 一方で、利益が下がった理由は、それだけ新たなクラウドビジネスに投資したから。この傾向は今後も引き続きなので、今期も利益は下がると予測している。それだけ投資を行い、一気にクラウドビジネスを軌道に乗せる戦略だ。このクラウドへの投資は、いまのところ成功していると言っていいのだろう。クラウドサービスの有料契約者数はすでに3,000社を突破。日本市場でこの分野を先行するセールスフォース・ドット・コムは、国内契約顧客社数を明らかにしていないが、噂レベルでは4000社程度という数字があるらしい。いまの勢いで行けば、近々にこの数字は越えられるだろうと青野社長は言う。

 サイボウズにとって、結果的にクラウドのビジネスはホワイトスペースを獲得している状況だ。サイボウズの既存パッケージ製品の顧客数は国内で40,000社あまり。現在このうちの1,000社くらいしかクラウドへの移行は始まっていない。今後これらオンプレミス製品の顧客がどのようにクラウドに移行していくかも、同社のクラウドビジネスの成長に大きく影響してきそうだ。既存システムをただ移行するだけでなく、クラウドならではの付加価値を示し、ビジネス規模を拡大するシナリオが欲しいところだ。

 そのための鍵となるのが、クラウドプラットフォーム・サービスへと成長した、データベースサービスのkintoneだろう。青野社長もグループウェアとともに、kintoneがもう1つのクラウドの柱になると言う。Salesforce.comのforce.comに比べれば、まだまだPaaS機能的には足りないところも多いkintoneだが、そのあたりは年3回のバージョンアップで徐々に充実させていく。さらに、パートナーのアプリケーションをアピールする場である、アプリストアの開設などでパートナーとのエコシステムにも積極的だ。

 3月に予定されているバージョンアップでは、JavaScriptを使ったユーザーインターフェイスの変更などにも対応し、外部連携のためのAPIなどもさらに充実させる。このようにカスタマイズ性を高めることで、さらに開発系のパートナーも取り込んでいく施策だ。

 また、kintoneの新たなコミュニケーション機能も開発中とのこと。「kintone People」「kintone Space」の2つで、前者が個人発想のコミュニケーション環境でありfacebookの情報発信、共有によく似ている。後者は、プロジェクトやグループ単位でのコミュニケーション環境であり、オープンなプロジェクトマネジメントを目的とした機能だ。このあたりの、クラウドでのコミュニケーション機能の強化は、他社のクラウドサービスとも方向性としては一致するものだろう。つまりは、市場ニーズに即したものとも言える。

 従来、企業システムは、ベンダー側の都合でデータを扱う基幹系と情報系やコミュニケーション機能を分けてきた。「kintoneでチャレンジしているのは、データとコミュニケーションが融合するところ。今後はさらにコミュニケーション機能を拡張しようとしています」と青野社長。kintoneはクラウドのデータベースサービスから、データとコミュニケーションを融合させるサービスへと進化することになりそうだ。

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クラウドデータウェアハウスサービスのRedshiftがいよいよ正式にサービスイン

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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