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データベースエンジニアよ外に出でよ! PGEConsの1年を振り返る

長かったゴールデンウィークもあっと言う間に過ぎ去り、連休前のことが遙か昔の出来事に思えてくる。ぼやぼやして忘れないうちに、1つ報告しておきたいことが。昨年4月、PostgreSQLをエンタープライズ領域、つまりは企業の主要なITシステム向けに普及させる活動を行う「PostgreSQL Enterprise Consortium」通称「PGECons」が国内ベンダー、システムインテグレーターなどのにより発足した。そのPGEConsの1年間の活動報告が、先日都内で行われたのだ。

 

PGEConsが1年間の活動成果を報告

 当初は、SRA OSS, Inc. 日本支社、NTT、NEC、日立製作所、アシストら共同発起人企業10社でスタートしたPGECons、1年経過した4月22日時点で正会員16社、一般会員23社にまで規模を拡大している。コンソーシアムのおもな活動は、技術部会による技術検証、広報部会によるイベントの主催や参加、情報公開など広報および啓蒙活動だ。

 2012年度の技術部会では、性能と設計運用という2つのワーキンググループが設定された。それぞれに興味のある正会員が参画し、実機の上で技術検証が行われた。性能ワーキンググループでは、スケールアップ検証、スケールアウト検証の2つを実施。前者は多コアCPUをどこまで使いこなせるかを検証するもので、最新のPostgreSQL 9.2の到達点を探るというもの。後者はレプリケーション機能などを用い、スケールアウトさせた際の特性を検証するものだ。スケールアップ検証では80コアCPUのサーバー提供を受け、実機検証を行っている。

 設計運用ワーキンググループでは、おもには他のデータベースとPostgreSQLの違い、優位点や注意点を整理することを目的に、2012年は活動を行った。検証するテーマ候補としては運用性、保守性、セキュリティ、接続性なども挙がったが、今回実施したのは移行性。PostgreSQLユーザーは、PostgreSQLだけを利用しているわけではなく、他の商用データベースと共用するのが普通。そのような中では商用データベースからの移行ニーズがあり、その際に発生する課題を解決する必要があると判断したのだ。

 課題となっているのは、移行プロセスが確立していないこと、ノウハウの蓄積などが不十分で移行費用の見積もりが難しいといった点がある。それら課題に対して2012年は、移行プロセスをフレームワークとして整理し、移行に活用できるツールの検証、他データベースのSQLの違いなどを具体的に検証した。

 これら2つのワーキンググループの活動成果報告書は、PGEConsのWebサイトからダウンロードできる。これからPostgreSQLを導入したいという方は、この報告書を入手してみてはいかがだろうか。ちなみに、2013年の技術部会は、性能、移行、設計運用の3つとなる。こちらの活動に興味のある場合は、是非会員となり技術部会に参加して欲しいとのことだ。

 ところで、PGEConsではこれまで年会費などは徴収せず、必要なリソースや設備、施設などは各社の持ち寄りで活動してきた。とはいえ1年間活動してきて、さすがに運営資金がまったくないのは動き難い。ということで、正会員の中の運営委員を対象に、年間10万円の年会費を徴収することにした。集められる100万円という予算は、各種セミナーの参加費用、WebサーバーのSSL利用料や広報活動に利用される予定だ。

 こういった、企業が集まり活動するコンソーシアムは、立ち上げたときは勢いがあるのだが、その後はあまり活性化しないものも多い。さらには、集まることは集まったけれど、具体的な成果がなかなか出せないことも。PGEConsの場合には、1年で技術部会のぶ厚い活動報告書を公開するなど、具体的な成果を出せた意義は大きいだろう。それだけ、PostgreSQLというオープンソースソフトウェアに企業が真剣に取り組んでいる証しでもある。また、参加各社は苦労もあったようだが、他社とコラボレーションすることで新たな発見もあったようだ。この部分は、自らの成長のためにも「データベースエンジニアよ、外に出でよ」ということかな。

アドビの新たなクラウド戦略は市場で受け入れられるのか

 もう1つは、ゴールデンウィーク明けに、IT業界がちょっと騒然となった話題だ。それは、日本時間の7日早朝に発表となったアドビの新たなクラウド戦略。騒然となったポイントは、クラウドというよりも、Adobe PhotoshopやIllustratorなどの永久ライセンス型のパッケージ製品「Creative Suite」が、現状のCS6までで終了すること。今後は、バージョンアップもアップデートも行われないことに。

 アドビは昨年、Creative Cloudというクリエイティブ製品の新たなクラウドサービスを開始した。これは、クラウドと銘打っているが、従来のデスクトップ版のアプリケーションをクラウドからダウンロードし、PCなりにインストールして利用するもの。ライセンスが、サブスクリプション型の月額制で、クラウド的なところとしてはデータをクラウド上で管理、共有できるストレージ領域が付いてくるところくらい。

 基本的に利用するアプリケーションは、これまでと同じCreative Suiteだった。つまりはAdobe Photoshop CSやAdobe Illustrator CSなどで、これらはパッケージ版を購入しても同じものが手に入った。これが2013年6月18日から提供される新しいCreative Cloudでは、ダウンロードするアプリケーションは「CC」というブランド名に変更される。たとえば、Adobe Photoshop CC、Adobe Illustrator CCとなるのだ。もちろんこのCCはCreative Cloudの略だ。今後のアドビのクリエイティブ製品は、このCCというブランドのもとにバージョンアップ、アップデートが行われ、これらはCreative Cloudのサービスからしか利用できなくなる。

 つまり、新たなクリエイティブ製品はクラウドでのみ利用できる。永久ライセンスのパッケージ版は、CS6の流通在庫がある限りはシュリンクラップ製品も販売されるが、流通在庫がなくなったあとはダウンロードでのみで継続販売される。しかし、CS6のバージョンアップやアップデートは行われないのだ。

 新製品が出る度にコンスタントにバージョンアップをしてきたユーザーにとっては、1年契約で月額5000円(個人版)、2台までインストール可というのは決して高いライセンス費用ではないだろう。とはいえ、旧いバージョンを長く使い続けているユーザーにとっては、年間6万円のライセンス費用は少し高いかもしれない。1年前のサービス開始時には、ユーザーはクラウドかパッケージかを選ぶことができた。しかし、今後は新しいものが欲しければクラウドしか選択肢はない。

 このクラウドへの全面シフトは、アドビにとっては大きなチャレンジだっただろう。さらに1年くらいは、新しいCC製品をパッケージとして提供し続ける選択肢もあったはずだ。とはいえそうはしなかった。これは、1年間Creative Cloudを提供してきて、2013年3月までに50万ユーザーを獲得したこと、13年度に125万ユーザーという目標も達成できそうな増加傾向があることなどから方向転換を決断できたのだろう。実際、日本においても予想以上のCreative Cloudへの移行がなされているとのことだ。

 今回CCという新しい製品になり、個別の製品のさまざまな機能追加ももちろんあるが、全体としてはデスクトップ製品のクラウド対応が強化された。なので、デスクトップ製品であってもサインインして使うのがCC製品の特長だ。そして、クラウド的な進化部分としては、設定やフォントなどをクラウドで共有、同期できること。さらには、クラウド上のストレージに10日間の履歴機能を追加などがある。さらに、BehanceというクリエイターのためのSNSも統合された。そして、もう1つのクラウドサービスであるMarketing Cloudとの連携なども挙げられる。

 クラウド版を選ぶのならば、これらクラウド的な強化部分を最大限に活用すべきだろう。そうすることで、月額5000円のライセンス費用も十分安価になるはずだ。そのためには、コンテンツを生み出すという業務そのもののやり方を、変える必要があるのかもしれない。このようなクラウド時代の変化は、今回はアドビのクリエイティブ製品での話だが、データベースのようなソフトウェアにもやがて訪れる。すでに、データベースのクラウドサービスも登場しているし、エンタープライズ向けのソフトウェアライセンスの考え方も、どんどんサブスクリプション型となっている。ITシステムという単位でROIを考えるのではなく、ITシステムから受け取るサービスとしてROIを考える時代に。IT担当者は、さらなる頭の切り替えが必要となりそうだ。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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