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物理的なモノと連携、本気で「便利」を追求するEvernote


以前にも、EvernoteについてはDB Onlineで取り上げた。そのEvernoteが目指しているゴールは、外部の「脳」を作ること。それにより人々が生活をしやすくし、仕事をやりやすくする。この外部脳というのは、自分用の外部データベースを作ることと言い換えてもいいだろう。じつはOracle OpenWorldと同じ頃、サンフランシスコではEvernoteのイベントも行われていた。そのイベントを受け、Evernoteからはいくつもの興味深い発表があったのだ。それらは、生活の中でよりスムースに情報を外部脳に入れ活用する仕組みだ。それを、Evernoteだけでなく、さまざまなパートナーと一緒に提供するという発表が相次いだのだ。

ポストイットの使い易さをEvernoteでデジタルの世界へ

EvernoteのCEO フィル・リービン氏
Evernote CEO
フィル・リービン氏

 「外部脳を作ってよりスマートな生活をする。そのためには、パートナーが必要です。すでにEvernoteのエコシステムには3万人の開発者がいます。さらにEvernote APP Centerを発表し、3rdパーティー製品を一同にまとめるサイトもリニューアルしました。これまでは、ソフトウェアばかりを作ってきましたが、これからは物理的なものも必要だと考え、その融合も考え始めました」と語るのは、EvernoteのCEO フィル・リービン氏だ。

 Evernoteではソフトウェアを工夫し、情報を扱いやすくする努力はもちろん行っている。しかしながら、実際の人の生活の様子を観察すれば、必ず物理的な「モノ」が介在している。たとえば、これだけデジタル化が進んでも、人は紙やペンを便利に使っている。

 この物理的なモノに着目した結果、昨年、モレスキンの紙のノートとの連携という興味深い取り組みを行った。紙のノートにメモしたことが、すぐにEvernoteにデジタル情報として取り込める。ノートに書いたメモがデジタル化されることで、タグ付けされ検索も可能となるのだ。この取り組みは成功し、すでにEvernote対応のモレスキンのノートは、世界で数十万冊売れている。

 「ペーパーレスは、ゴールではありません」とリービン氏。紙をなくそうとするのではなく、紙を使っていて「不便な経験」をなくすのだ。ようは、生活の中での紙の使い方をよりよくすることが目的。この発想から、新たに提携したのが3M社のポストイットだ。

 「ポストイットはヒーロー製品、あこがれの製品です」とリービン氏は言う。融通性があり、いつでもどこでも使える。何十億もの人が、なんらトレーニングを受けずにすぐに活用できる。「シンプルで使いやすい。こんな製品を作りたいと思っていました」とリービン氏。今回のポストイットとの連携も、基本的には昨年のモレスキンのノートと同様だ。ポストイットに書いた情報を、すぐにEvernoteにデジタル化して取り込める。特徴的なのは、ポストイットの用紙の色を認識すること。ポストイットを使う際、色によりメモの内容を分類することはよくやる。その便利さを、そのままEvernoteにも取り込んだのだ。

 もう1つの新たな取り組みは、Salesforce.comとの連携だ。Evernoteを仕事で利用している人は多いが、それはあくまでも個人作業の効率化だろう。「現在、7,500万人のユーザーのうち、66%は仕事でEvernoteを使っています。今後ツールを構築する際には、そのことを考慮する必要あります。仕事でも、より良い経験をしてもらうことは重要です」とリービン氏。

 今回、Evernote Business 2.0の提供を新たに開始した。これを使えば、仕事で仲間とさまざまなつながりを、Evernoteで持てるようになる。そして「もっともわくわくするのが、Salesfore.comと統合された部分です。EvernoteのビジネスアカウントとSalesforce.comのアカウントを1つにし、両方に関連する情報をすべて抽出するといったことが簡単にできるようになりました」とのことだ。

 このほかにも、スタイラスペンや鞄、さらにはPFUのスキャナー「ScanSnap」との連携も開始した。これら一連のパートナーシップに「非常にわくわくしています」とリービン氏。これからもナレッジワーカーに必要不可欠な「モノ」を届け続けと言う。そこには、デジタルだけにこだわるのではなく、人の生活や仕事の仕方を観察し、そこにある不便を解消する姿勢が見て取れる。

 「今後はさらに物理的なものとデジタルの融合を進めたい。さらに、ウェアラブルなデバイスもやりたい。そして美しいモノも作りたい。そして、コンシューマとエンタープライズの融合もさらに進めていきます」とリービン氏。デジタルの世界にいると、どうしてもそれに固執してしまう。便利とは本来なんなのか、それを考えるための柔軟な脳が必要だなと改めて思う。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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