良品計画さんといえば、言わずと知れた無印良品。無印良品には現在、大きく分け4つの情報発信チャネルがあります。まずは、国内で約400店舗展開しているリアル店舗、そしてオンラインストアの「無印良品ネットストア」。そしてスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」、そして公式Twitter。この4つのチャネルから日々集まる膨大な量のデータをどう活用していくのか?
「MUJI passportアプリを初めて、2年になります。データが2年分あるというわけです。そのほかに、SNSのIDなど、いろいろなミニIDがあります。こうしたところから出てくるデータを統合して見たい、コミュニケーションの効果を見たいというのが課題でした」と語るのは株式会社良品計画のweb事業部部長の奥谷孝司さん。
もともと、良品計画では「ネット・リアルの区別なく、無印良品のファンとコミュニケーションを図りたい」「「マーケティングの効果をより詳しく可視化したい」といったニーズがありました。そこで、「MUJI DIGITAL Marketing 3.0」と称するデジタルマーケティング施策を展開、スマートフォンアプリ「MUJI passport」を提供しはじめたのが2013年5月。
MUJI passportは、2015年3月時点で、351万人が利用する、国内有数の専門店アプリとなりましたが、その一方で見えてきた課題もありました。
たとえば、ソーシャルでのキャンペーン、メールマーケティング、外部コラボレーション、そしてアプリを通じて店舗への送客を促進すべく施策を講じてきたものの、どれもが局所的で、全店舗をサポートすることができなかったといいます。
これら課題解決のために必要なのは、現場の従業員が活用できるような使い慣れたユーザーインタフェースであること。そして、現場での各部門が、それぞれ、必要なデータを活用するために、いろいろな切り口でデータを可視化できること―こうしたニーズに応えうるパートナーとして良品計画が選んだのが、だれもが使える分析ツールであるExcelを持ち、高品質かつ安価なクラウドサービスを持つ日本マイクロソフト。
「商品ごと、店舗ごとと、異なる切り口でみることができるので、とてもみやすいです。また、年代ごとの購買層を分析することもできます。現在、30代が一番大きな購買層なのですが、アプリの導入によって、20代のファンが増えたことがわかります。こうしたマーケティング施策の可視化は各チャネルを統合していてこそわかることです」(奥谷)
4月1日からの運用と、まだ日が浅いものの、それなりの効果が見えてきている様子です。
「こんな分析ができます」と、奥谷さんが披露してくれたのが、特定の商品を購買した人のデータの分布。たとえば、大ヒットしている「人をダメにするソファ」こと、「体にフィットするソファ」の利用者範囲を見てみたところ、20代の男性が多いことがわかったそうです。
「この商品はTwitterでとある方がどれだけ堕落するかを検証してくれたのが広まりました。その影響もあって、増税後にもかかわらず、20代男性が買い支えるという現象が起きました」(奥谷)
もっとも、こうした分析は地味で、簡単にすばらしい仮説や知見が生まれるわけではありません。「社内からは、『そんなの知っている』というコメントばかり」(奥谷)だそうです。確かに、ビッグデータ分析と呼ばれるものの中には、「データを分析したところ、『風が吹けば桶屋が儲かる』という知見が得られた」というような、すでにわかっていることの裏付けである場合も多いです。
加えて、これまでの無印良品のヒット商品を見れば、ビッグデータ分析以前から、従来からきめこまかな観察と分析によって商品開発が行われていたであろうことが察せられます。
それが今後、Power BIによって、商品開発がどう進化するのか、しないのか、ビッグデータ分析の目に見える効果として判断がつくのはもう少し先かもしれません。
「それでも「予測」を続けることで、精度の高いマーケティング施策を高速で回し、データを蓄積し、さらに予測精度の高い施策へつなげていきます」と奥谷さん。
一方、「ビッグデータの民主化」を掲げてきた日本マイクロソフトでは、モバイルBIベンダーのDataZenを買収し、いよいよ「ビッグデータの裾野拡大へ向け、動き出しているようです。
DBオンラインでも、Power BIの使い方講座の連載を始めようと企画が進行しつつあります。機械学習のMachine Learning、そしてAzure、Power BI…ビッグデータ民主化へ向けた日本マイクロソフトさんの旅はどこへ向かうのか、お届けしていく予定です。お楽しみに。