NSXは、サーバ仮想化の次のステップの仮想化を実現するものとして重要になる
発表会には、ヴイエムウェア代表取締役社長の三木泰雄氏、米VMwareのCEOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏、米VMwareネットワーク担当CTOマーティン・カサド(Martin Casado)氏が参加。また、NSX利用企業として、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部長の田中基夫氏、ニフティクラウド本部クラウド事業部長の上野貴也氏、関電システムソリューションズITサービス事業本部ITサービスインフラ構築部部長の角野俊朗氏が参加し、利用の経緯や期待を語った。
NTTコミュニケーションズの田中氏は、採用に至った理由として、同社の「グローバルクラウドビジョン」との親和性を挙げた。グローバルクラウドビジョンは、ネットワークを含む統合されたICT環境をクラウドとしてグローバルに提供することを推進するもの。田中氏は「同じ方向に向かって一緒にやれることがあるのではないかと検証や研究開発を行った。VMwareはソフトウェアプロバイダーで、われわれサービスプロバイダーと立場は異なるが、向かっている先は同じだ」とした。
BizホスティングEnterprise Cloudでは、NSXを顧客のデータセンターとNTT コミュニケーションズのデータセンターの間で仮想的なトンネル掘り、データをマイグレーションするサービスに用いている。オーバーレイ型の製品でL3ネットワークを拡張できるため、移行にあたってIPアドレスの再設定が必要なくなるというメリットがある。一方、Cloudn(クラウド・エヌ)では、NSXとOpenstackを組み合わせて、同社のVPNサービス「Arcstar Universal One」とCloudn(クラウド・エヌ)などのパブリッククラウドといった別々のネッワークを同じネットワークのように扱うことができるようにした。
「将来的には、顧客のオンプレミス環境、クラウド環境、コロケーション環境などICT環境全部をSDNで接続し、シームレスに管理できるようにしたいと考えている。Software Defined Everythingとして使うためにも、VMware製品はキーファクターになる」(田中氏)
ニフティの上野氏は、2005年にVMwareのサーバ仮想化を全導入したことが採用の背景にあったと説明。VMwareを標準環境に採用することでIT投資を60%削減したという。2010年からクラウド事業としてニフティクラウドを開始し、現在製品の評価をしている段階だ。「クラウドを提供するユーザーの視点で見ると、NSXには、利用効率の向上、スケーラブルな運用、外部との接続性という大きく3つのポイントがある」という。
利用効率の向上は、VLANやMACアドレスの制約を超えることで、物理ネットワークに対してフラットなコンピューティング環境が構築すること。制約により分割されているリソースプールを統合することでインフラの利用効率が向上する。同社の試算では、リソースプールの規模を3倍にした場合、インフラの原価は30%削減できるという。
スケーラブルな運用は、データセンターのネットワークを集中管理できるようにすること。ネットワークの分野では、規模がスケールするとその分、運用人員を増やす必要があるなど「運用がスケールしない」状況にあった。「NSXを使って、これまで遅れていたネットワークの世界の集中コントロールを実現したい」という。
3つめの外部との接続性は、ニフティクラウドとプライベートクラウドを接続すること。エンタープライズ分野は半分以上がハイブリッドクラウドを採用しており、オンプレミスやデータセンターのハウジング環境、閉域網などとつないでいく必要がある。「IPアドレスを変えたくないという要望も多く、NSXでそれに応えていきたい」とした。
関電システムソリューションズは、2012年から大阪のデータセンター2拠点で検証用のクラウド環境を準備して、NSXを検証している。解決すべき課題としては、拠点間ネットワークの再設計が手間だったこと、ネットワークが複雑化し、維持管理、変更作業に工数がかかっていたこと、VLANの競合や枯渇が起こっていたこと、災害対策でサーバ再起動するとネットワーク再設定が必須だったこと、大規模ネットワークを維持するために技術者を育成する必要があったことを挙げた。
「検証の結果、パフォーマンス劣化がなく、セグメントが異なるクラウド間をシームレスに移動できることを確認することができた。今後は、提携するデータセンターのクラウドと相互接続してサービスの可用性を高めたり、クライアントの多様化に対応していきたい。また、ファイアウォールやロードバランサ、ストレージを含めた仮想化も必要になってくるが、VMwareのリーダーシップを期待している」(角野氏)
なお、ユーザー紹介に先立ち、ゲルシンガー氏が、今日のITインフラストラクチャに求められる要素やSoftware-Defined Data Centerの進捗を説明した。ITインフラの必要事項としては、仮想化をITのすべてに分野に拡張すること、運用管理を自動化すること、どこからでも利用可能な互換性のあるハイブリッドクラウドを構築することの3つがある。Software-Defined Data Centerはこれらを実現していくもので、サーバ、ネットワーク、ストレージ、自動化という4つの側面から製品強化を図ったという。特に、NSXは、サーバ仮想化の次のステップの仮想化を実現するものとして重要になると話した。
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