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IoTの価値を無視すべきではない -「モノのインターネット」の本質とは何か?

■前編

 古くからある概念である「モノのインターネット」(Internet of Things:IoT)が今また大きな注目を集めるようになってきた。どのような新トレンドについても言えることだが、IoTについても業界において多少の混乱が見られるようだ。本記事では数回にわけて、IoTの本質と価値、そして、企業ITへのインパクトを考えていくこととしよう。

IoTとは何なのか?

 クラウド、ソーシャル、ビッグデータに続く重要トレンドとして「モノのインターネット」(Internet of Things:IoT)が注目を集めている。 IoTの概念そのものはそれほど難しいものではない。従来型のインターネットがコンピューターのネットワークであったのに対して、テクノロジーの進化により、今まではネットワークに接続されていなかった「モノ」がインターネットを介して情報をやり取りする能力を備えていくということだ。

 ここで、「モノ」には「コンピューターを内蔵した物品」も含まれるし、無線タグを付した物品のようにそれ自体ではコンピューターとは呼べないが、別のコンピューターと情報をやり取りすることで間接的にインターネットに参画できる物品も含まれる。重要なのは、「コンピューターを内蔵したモノのネットワーク」あるいは「コンピューターとやり取りできるモノのネットワーク」とは言わずに「モノのネットワーク」と呼んでしまってよいほどコンピューターが見えない存在になっていく点だ。

 IoTに相当する概念は新しいものではなく、1990年頃から議論されてきたものだ。概念としては新しくはないがテクノロジーと利用環境の変化により急速に重要性が増しているという点ではクラウドやビッグデータとも共通する部分がある。

 IoTに関連したもうひとつの重要概念にM2M(Machine-to-Machine)がある。人間を介在しない機械どうしのやり取りによりプロセスが実行されていくという考え方である。現在のコンピューターが処理するデータの大部分は元々人間が入力したものであり、多くのプロセスは人間が起動することで実行される。

 これに対して、M2Mの世界では、たとえば、自動販売機自身が在庫を監視して補充が必要になった時に在庫管理のサーバに発注依頼を送信するなど(さらには出荷された商品の無線タグを読み取ることで自動的に在庫管理サーバの情報が更新されるなど)、人間の介在なしにデータの捕獲、そして、それに対するアクションが実行される。機械だけによる自律的な最適化が行われることもある。人によってはM2MをIoTと同義にとらえる人もおり、M2MをIoTのサブセットとして捕らえる人もいる。また、IoTはより総合概念に近く、M2Mはより要素技術に近い言葉というニュアンスもある。

 IoTに関連してIoE(Internet of Everything)という言葉もある。これは、米Cisco Systemsが提唱している概念であり、M2Mだけでなく、P2P(ここでは、一般的なpeer-to-peerではなくpeople-to-peopleを意味する)およびP2M(people-to-machine)も含めたインターネットの姿だ。つまり、IoEはIoTを包含する概念と言える。

次のページ
IoTに向かう3つの流れ

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この記事の著者

栗原 潔(クリハラ キヨシ)

株式会社テックバイザージェイピー 代表、金沢工業大学虎ノ門大学院客員教授日本アイ・ビー・エム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。弁理士、技術士(情報工学)。主な訳書にヘンリー・チェスブロウ『オープンビジネスモデル』、ドン・タプスコッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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