拡がるSNS―人間関係に不協和音を生じさせる恐れも
総務省の調査によれば、若年層のコミュニケーションの手段は、メールからソーシャルメディアに移行している(参考:平成25年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査<速報>)。また、ソーシャルメディアの利用者は過半数を超え、57.1%と若年層以外にも拡大しており、コミュニケーションツールとして認知され始めている。既存の電話や電子メールと同じようにソーシャルメディアを利用しても問題ないのだろうか。
確かに、ソーシャルメディアの登場で私たちがこれまで知りえなかった情報が手に入るようになった。総務省の調査によれば、SNSにおけるメリットとして、「情報が早く得られるようになった」(47.7%)、「情報をたくさん得られるようになった」(41.7%)という回答が多かった。
また、ソーシャルメディアは、学生時代の友人や同じ会社の同僚および家族と近況をやりとりする事ができる。または知り合って間もない人に自分を知ってもらうツールとして、逆に相手を知るためのツールとしても役立つ。既存のコミュニケーション手段にはない特徴を持っている。しかし、ソーシャルメディアは、人間関係に不協和音を生じさせる恐れがある。
人間関係が悪くなる事を恐れて、なし崩し的に友達リクエストを承認するケース
なぜなら、ソーシャルメディアは、これまで、言語・文章で表現されてこなかった行動や考え方を可視化できるため、職場や身近な相手の困った投稿によって信頼関係が崩れる事がある。例えば、就業時間中のソーシャルメディアへの投稿は、仕事に集中していないと思われるケース。法事で有給休暇と言いながら実体は、『今日は、ゆっくり自宅で映画鑑賞しています』と投稿し、嘘がばれてしまうケース。上司が『中間管理職が辛い。ストレスが溜まる』と投稿し、それを見た部下が上司との人間関係に悩むケースなどがある。
また、ライフメディア社「リサーチバンク」の調査によれば、「フェイスブックの友達リクエストで困った経験がありますか?」という質問に対して、49.5%の人は「ある」と回答している。例えば、お客様や仕事上の関係者から「ソーシャルメディアのアカウント持っているの?」、「友達になろうよ?」と、その場でスマートフォンを持ち出し、友達リクエストをしてくる人がいる。
「仕事と関係ないプライベートな投稿を見られたくない」という理由から友達になる事に躊躇する場面がある。しかし、人間関係が悪くなる事を恐れて、なし崩し的に友達リクエストを承認するケースもあるだろう。
特に気をつけて欲しいのが今年4月に入社する新社会人である。下の図のように10代から20代、30代に掛けて、ツイッターの利用者が減少。逆にフェイスブックの利用者が拡大している。特に2011年から始まったソーシャルメディアを活用した就職活動(以下、「ソー活」という)では、ソーシャルメディアを活用して自分自身をプロモーションする必要があるため、実名のフェイスブックが20代から利用されるようになった。利用経験の浅いフェイスブックでは、学生時代に利用していたLINEとは、違う新たな問題に陥る危険性がある。
そもそも、人間関係は、適切な距離を保つことが重要である。本来、人は相手との親しさに応じて接し方や間合いの取り方を変えている。アメリカの文化人類学者。エドワード・ホールは、相手との関係と距離感を4つに分類している。
家族、恋人は、身体に容易に触れることができる距離、友人同士は、二人が共に手を伸ばせば相手に届く距離、上司は、身体に触れることはできない距離、講演会や公式な場での距離はそれ以上と分類している。しかし、ソーシャルメディアには、良い意味でも、悪い意味でも人間関係の距離感を縮める効果がある。そのため、ソーシャルメディアの機能を使って相手との距離感を適切に保つ術を身につける必要がある。