SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

追加見積もりに合意していない作業に支払いの義務はあるか?

 今回も、前回に続いて、システムの要件追加・変更に係る問題についてお話ししたいと思います。前回は、開発中にユーザーが要件を追加し、その開発工数があまりに膨大だったために、ベンダーが作業を止めて引き揚げてしまった事件についてお話ししたと思います。今回は、それとは逆に、まだ金額について合意していない機能追加作業をベンダーが進めてしまったケースについてお話ししたいと思います。

 IT開発というのは面倒なもので、一旦、要件を凍結した後でも、五月雨式にその追加・変更が発生します。五月雨式に次々と湧いてくるわけですから、一つ一つ、契約の見直しや金額の合意をしていたのでは仕事になりません。ですからユーザーもベンダーも、やることが決まっている作業であれば、正式な見積もりや契約変更は後回しにしてとにかく作業を先行させようということになります。

 こういう場合、ユーザーとベンダーが作業内容や工数について、正しい理解を共有しているのであれば問題は起きません。しかし、双方の理解に齟齬があれば、両者は対立することになります。

「この機能、入れるって話だよね?」
「いえ、それは、まだ決まっていません。」
「こちらが、今回の追加作業についての、お見積りになります。」
「ええ?金払うの?」

 ITの世界では、こんな会話もめずらしくありません。このように、追加要件と費用について合意のないまま作業を行った場合、その責任はどちらにあるのでしょうか。今回は、そんな事件のご紹介です。

 まずは、判例からご覧ください。

合意していない作業をベンダーが行ったについて争われた事例

 【東京地方裁判所 平成15年5月8日 判決より抜粋して要約】

 あるソフトウェア開発業者(以下 ベンダー) が通信販売業者 (以下 ユーザー) から販売管理システム等の開発を一括請負 6500万円で受託し開発を開始した。開発はシステムをいくつかに分けて、順次、開発し納品する形で進められたが、開発中にユーザーから多項目にわたる修正・改善要求が出された。

 ベンダーは,ユーザーとの会話の内容から、これらの要求については、対応せざるを得ないと考え、追加費用等の合意を得ないまま、作業を行い完遂した。ベンダーは、作業後に、追加費用3150万円を請求する見積書を提出したが、ユーザーは、金額に合意していないことを理由にこれを支払わず、ベンダーは支払いを求めて訴えを起こした。

次のページ
ポイントはユーザー側の認識

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/7537 2015/12/24 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング