2025年10月3日、PingCAPは年次イベント「TiDB User Day 2025」を開催した。

同イベントは、同社が提供するNewSQLデータベース「TiDB」に関する最新動向やベストプラクティスなどを学ぶことができる場として、今年で4回目を迎える。事前登録者数は1,000名超、会場では約400名と多くのユーザーが参加する中、キーノート講演には米PingCAP 共同創業者 兼 CEOのマックス・リュー(Max Liu)氏が「Scale intelligently in the era of AI」と題して登壇した。

設立10周年を迎えるPingCAPでは、AIが開発現場にも浸透してきていることを感じているとして、バイブコーディングなどの新たな手法が登場していると言及。まさに開発者を取り巻く環境が変化していることを指摘すると、「われわれは『AI』によって、アイデア創出から製品化までの一連のプロセスを短縮しようとしている」とリュー氏。TiDBでは、ビジネスの拡大にあわせて柔軟なスケーラビリティを提供できる点などを強みとしてきた中、自動化の水準をより引き上げることでAI時代に求められるスピード感をともなった製品開発に寄与できるプロダクトに進化させると話す。
「迅速に“うまくいくシステム”を作り出し、スケールさせていく──ここを支えるものこそデータベースであり、TiDBが寄与できるようにしていく」として、たとえばスケーラビリティと一言で表しても、下図のような多様な指標が考えらえるとリュー氏は説明する。

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「TiDBならペタバイト級のデータであっても、数秒でバックアップ可能だ。たとえば、DifyはマルチデータベースをTiDBで統合することにより、コストを60%削減している。(AI時代のニーズにあわせて)われわれは『workload-aware scale(ワークロード対応型スケーリングモデル)』を採用した、次世代のデータベースを提供していく」(リュー氏)
現在提供しているTiDB Cloudの新しいプランとして、「Starter」「Essential」「Premium」というオファリングを3つ追加することが発表された。

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Starterは、プロトタイプやMVP開発に向けたプランとして、大規模環境への移行前の利用が想定されている。Essentialでは、スケーラビリティやセキュリティなど、標準的なアプリケーションを想定されたバランス型のプラン。そしてPremiumは、エンタープライズ水準の厳格な要件にも応えられるだけの機能とスケーラビリティを備えたものだとした。
また、新しいプランの提供にともない、workload-aware scaleに対応した新しい「TiDBカーネル」が採用されている。オブジェクトストレージからデータを直接取得することで、より迅速なスケールアウトが可能とのことだ。なお、Essentialのパブリックプレビュー版は、AWS上にて10月14日の提供を予定しているとのことだ。

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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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