SAPは、初開催となる「SAP Connect」において、AI・データ・アプリケーションの統合により企業変革を加速するという新たなソリューションを発表した。
具体的には、「SAP Business Suite」の中核を担うAI「Joule」において、新世代の「Joule アシスタント」を発表。この新しいJoule アシスタントは、SAP Business Suite全体のアプリケーションやデータを活用し、各業務領域における人の役割に応じて協働するよう設計されているという。各Joule アシスタントは、業務上の特定の役割に合わせて設計されており、タスクに適したエージェントを呼び出して構成・管理し、人間がより高度なインサイトの取得と生産性の向上に集中できるよう支援するとのことだ。
Joule アシスタントを支えるのは、特定の業務領域に特化したJoule Agentsの拡充されたライブラリだという。たとえば「People Manager Assistant」は、報酬の異常などを検出・解決する「People Intelligence Agent」を含む複数の専門エージェントを調整し、マネージャーの業績向上をサポート。加えて「Financial Planning Assistant」は、キャッシュフローを最適化し利回りを改善する「Cash Management Agent」などのエージェント群に支えられ、財務部門の効率化を推進するという。これらのJoule アシスタントは、各部門で人と協働してパフォーマンスを高めるだけでなく、部門を横断して連携し、企業全体にわたる課題の解決を支援するとしている。
またSAPは、AI活用の基盤となるデータ連携を強化する新サービス「SAP Business Data Cloud Connect」(以下、SAP BDC Connect)を発表した。データはAIの可能性を引き出す源泉だが、多くの企業では依然として複数のシステム間で分断されているという。同社はこの課題を解消するため、SAP BDC Connectを提供するとのことだ。
SAP BDC Connectは、「SAP Business Data Cloud」とパートナープラットフォームを安全に接続し、組織や技術の垣根を越えてビジネス対応データプロダクトの双方向連携を支援。ゼロコピー共有技術により、データはSAPシステム内に安全に保持されたまま、顧客の既存データプラットフォームから参照できる設計だという。これにより、コストをかけることなく、またデータのコピーを作成することなく、ビジネスコンテキストを維持したまま分析やAI活用を支援すると述べている。
この仕組みにより、分散していたデータの連携が進み、データ処理の流れが整理され、重複を抑えた効率的な活用が可能になる構成になっているという。これにより、必要な情報に迅速かつ信頼性の高い形でアクセスできるとしている。
加えてSAPは、DatabricksとGoogle CloudがSAP BDC Connectの初期パートナーとして参加することを発表した。今後も対応パートナーを順次拡大していく予定だという。SAP DatabricksはSAP Business Data Cloudの一部として提供されており、SAP BDC Connectはこの連携を拡張し、よりオープンなデータエコシステムの形成を支援するという。
これらのパートナーシップを通じて、顧客は分析やAI活用に必要なデータプロダクトに、より迅速かつ容易にアクセスできるようになり、データからリアルタイムのビジネス成果を導くまでのプロセスを効率化できるとしている。
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