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IBM傘下ApptioがTBMカウンシル米年次会議で新戦略発表──AI財務インテリジェンスなど

写真:(左より)Matthew Guarini Executive Director, TBM Council, TBM Council/Ajay Patel General Manager, Apptio, Apptio, an IBM Company/Eugene Khvostov Chief Product Officer, Apptio, an IBM Company

 TBM(Technology Business Management)を推進するTBMカウンシルは11月10日から12日まで、米国フロリダ州マイアミで「TBM 2025(Technology Business Management Conference 2025)」を開催した。過去最大規模となる約1,400名が参加し、キーノート14本、ブレイクアウトセッション100本以上が実施され、24社のスポンサー企業が支援した。

 「TBM by Design」をテーマに、AI時代におけるIT投資を戦略的価値に変換する方法が議論され、IBM傘下のApptioが新たなAI機能とFinOps製品群の強化を発表した。TBMカウンシルのMatthew Guarini氏、ApptioのAjay Patel氏、Eugene Khvostov氏らが基調講演に登壇し、AI時代におけるTBMの重要性と製品戦略を解説した。

TBM実践企業は予測精度91%、ハイパフォーマンスの4条件を提示

 TBMカウンシルのGuarini氏は基調講演で、「すべての組織がテクノロジーの可能性を最大限に引き出すための不可欠なグローバルスタンダードになる」というビジョンを示した。調査会社ISGと実施した「State of TBM」調査を引用し、64%のCEOが価値を把握する前に新しいテクノロジーに投資しなければならないプレッシャーにさらされているという現実を指摘した。

 同調査では、TBM実践企業の91%が財務予測を生成でき、75%が「簡単」、62%が「速い」と回答した。一方、非実践企業では28%が予測を全く生成できず、「簡単」49%、「速い」40%にとどまった。Guarini氏は「資金をどう成功の促進に活用しているかを示せなければ、信頼は得られない」と、TBMによる可視化の重要性を強調した。

 ハイパフォーマンス企業の4条件として、1つ目はビジネス価値への焦点、2つ目はすべてのテクノロジー投資の100%への対処、3つ目は台帳からビジネス成果に至るまで導く標準的なタクソノミー、4つ目は深いインサイトの実現を挙げた。さらに、投資サイクルなどのプロセスへの組み込みと、IT部門のみならず経営、財務、取締役会を含めた全社レベルでの実践が重要だと述べた。

 イベントではTBMアワードセレモニーも開催され、日本企業からファイナリストとして選出されたみずほフィナンシャルグループと富士通のうち、みずほフィナンシャルグループが受賞した。TBMカウンシルのメンバーは現在2万名以上に拡大し、そのうちCXOレベルが約2,000名を占めている。

AI時代の意思決定、「金融のGPS」による価値創造を提唱

 ApptioのPatel氏は基調講演で、AIの誇大広告と現実をテーマに「ハイプから高い価値への転換」を訴えた。AIのPoCやトライアルは進んでいるものの、スケールして価値を創出できている企業は5%未満だという既存データを参照し、「AI時代には俊敏さとしなやかさが鍵になる」と指摘した。

 AI時代のコスト管理について、Patel氏は「AIのコストはクラウドをはるかに超える。誰が費用を負担し、どのような価格設定で価値を提供するかが重要になる」と警鐘を鳴らし、迅速で賢明かつ財務的根拠に基づいた意思決定が不可欠だと述べた。

 技術投資の正当化では、「IT・技術コストは増加する一方であり、その価値がどこで実現されるかを結びつけ、説明し、優先順位をつける必要がある」と強調した。技術的負債の管理をAI戦略の一環として位置づけることで29%のROIが得られるという調査結果を示した。

 データ統合について、「データは豊富だが、部門ごとのサイロ化が課題だ」と述べ、様々な財務データ、資産オペレーションデータ、人事関係データを集約して関連付ける重要性を訴えた。TBMの進化では、「静的なプラットフォームではなく、能動的な意思決定フレームワークとして活用されるべきだ」と主張した。

 Patel氏は「財務インテリジェンス」(Financial Intelligence)という概念を提示し、「コストの追跡や最適化だけでなく、望むビジネス成果に到達する道筋を示すことが重要だ」と、単なるコスト管理を超えた価値創造の必要性を強調した。この実現の鍵として、「プロダクトマネージャー、ポートフォリオマネージャー、財務担当者といったすべてのペルソナが共有の真実を持ち、協調的な方法で情報に基づいた意思決定を下せるようにすることが鍵となる」と述べた。

 Apptioは、この「財務インテリジェンス」によるファイナンスデータから新たな資産を導き出すためのプラットフォームを提供するというビジョンを示した。具体的には、FinOps、ITファイナンスマネジメント、ストラテジックポートフォリオマネジメントというアプローチを通じてビジネス成果に結びつける役割を担う。

Apptio製品は16の新機能発表、AIによるデータ分類を実現

写真 TBM 2025の様子(米マイアミ)

 Apptioの最高製品責任者Khvostov氏は、製品開発の指針として、データに文脈を付加し、インサイトを発見し、行動を促す「フライホイール」の概念を示した。「取り込むデータが増えるほど、付加する文脈が増え、見つけられるインサイトが増え、取れる行動が増える」と説明した。

 今回発表された16の新機能のうち、特に注目されるのがAIアシステッドデータクラシフィケーション機能だ。これは、財務情報などの様々なデータをApptioに集約する際のマッピング作業をAIで支援するもので、生成AIや機械学習モデルの進化を取り込んだ。ベンダーや固定資産、タワーなどのマッピング表作成にAIを活用できるが、人間による評価は引き続き必要だという。

 SPM(戦略的ポートフォリオ管理)コントロールセンターは、IBMのデザイン標準であるカーボンに合わせた新UIを採用し、TargetProcessとApptioの機能を統合した。企業の戦略からIT投資、プロジェクト化、資金と人員の配分を統合的に管理できる。また、レポート作成機能もBIツールのようなドラッグアンドドロップ方式を採用し、ウォーターフォールチャートやバーチャートなど多様な表現が可能になった。

 TCO(総所有コスト)ソリューションも拡充され、AI TCO、メインフレームTCO、データセンターTCO、プロダクトTCOなど多様な選択肢を提供する。メインフレームTCOは、IBM ZおよびInteliMagicと統合し、基幹業務の65%がメインフレームで動いている現状において、アプリケーション単位でのTCO可視化を実現する。

 Cloudabilityでは、マルチクラウドAI支出ダッシュボードを全顧客に無料提供し、AWS Bedrock、Amazon Q、SageMaker、Azure AI Foundry、GCP Vertexなど主要クラウドプロバイダーのAIサービスのコスト、使用量、トークン消費量を可視化する。

 AI機能として「AI Lens」のプレビューを開始した。レポートやダッシュボードに対してAI Lensボタンを押すと、その瞬間にインサイトを表示する機能で、IBM Watsonxモデルを活用した予測機能では、任意の期間のデータから将来を予測し、異常値の除外も提案する。

 さらに、「Conversational Insights」と呼ぶ対話型分析機能のパブリックプレビューも発表された。自然言語で「コスト最適化の余地を教えて」「どこのコストセンターでスペンドが増えているか」などと質問すると、日本語でも回答が得られる。複数製品をまたがった質問も可能で、Khvostov氏は「組織のどこにいても、所有する製品が何であっても、得たい答えを得ることができる」と、AIによる財務インテリジェンスの民主化を推進する姿勢を示した。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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