SAPジャパンは2月17日、同社代表取締役社長 鈴木洋史氏によるオンラインでの会見を行い、2020年度の業績内容を紹介するとともに、中期変革プログラム「SAP Japan 2023 Beyond」、「SAP Japan Customer Award」受賞企業などを発表した。また、新型コロナウイルスワクチン予防接種に関する「ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)」の日本での提供内容も紹介した。
SAPジャパンの売上の伸び率はグローバルを上回る
はじめに鈴木社長はSAPのグローバルの2020年度の業績を紹介。クラウドは前年度比18%増と堅調で、総売り上げは前年度比1%増、すべての売上項目で修正後の目標は上回るとともに、出張の自粛や施設関連費用の削減などコストの圧縮により営業利益も前年度比4%増、修正後の見通しの範囲の最高値を達成したと語った。
出張など経費精算業務の激減で苦戦したコンカーなどの経費精算クラウド分野を除くと、クラウド売上は前年度比前年度比27%と大きく伸長。クラウドを中心とする予測可能な売上の占める比率が昨年より4.4ポイント上昇し72%となり、クラウド分野が堅調であることを強調した。
またSAPジャパンの業績については、2014年度より順調に成長し、「グローバルの伸び率を大幅に上回る前年度比11%増を達成し二桁成長を堅持した」と語った。
「SAP Japan Customer Award 2020」
2032年までの中長期ビジョン「日本の『未来』を現実にする」「お客様の成功にとってなくてはならない存在となる」ことを目指す一環として、顧客を表彰し、内外でDXの取り組みの認知度を高め、DXも促進していくことを目的とし、SAP Japan Customer Award の設立を決定。下記の受賞企業を表彰した。
<Japan Society 部門>
対象:日本が抱える社会問題を解決し、ビジネスとして継続している事例
受賞団体:一般社団法人 グラミン日本
<Innovation部門>
対象:イノベーションや新たなアイデアを多様な企業・組織と実現した事例
受賞企業:三井金属鉱業株式会社
<Japan Industry 4.0部門>
受賞企業:川崎重工業株式会社
<Cloud Adoption部門>
対象:クラウドサービスを導入し、ビジネスで成果を出した事例
受賞企業:日東電工株式会社
<Experience Management部門>
対象:Qualtrics(R)を活用し、「顧客・従業員・製品・ブランド」の体験に
エンゲージメントを深めている事例
受賞企業:株式会社LIXIL
中期変革プログラム「SAP Japan 2023 Beyond」を策定
20カ年経営ビジョンの実現に向けた3カ年の変革プログラムとして、今回新たに「SAP Japan 2023 Beyond」を策定。5つのカテゴリー、さらに12のフォーカスチームと呼ばれる小規模なタスクフォースに分かれ、2023年の目標達成を目指し取組みを推進していくという。
ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)の日本での提供を開始
新型コロナウイルスワクチン予防接種に関して、日本の自治体から住民へのワクチン接種に至る管理と接種状況のリアルタイムでの可視化を行うサービス「ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)」の日本での提供を発表。VCHは以下の3階層のサービスとなり、それぞれがAPI連携する形となる。
1) バリューチェーン可視化 製造メーカーから納品まで
原材料入手から製造、配送に至る製造・物流の管理を支援するサービス。正規商品のみを正しく流通させること、各所の需要に応じた生産を行うこと、新規メーカー・要件に対しても迅速に対応することなどを可能とする、製薬メーカーと国(購買者)をつなぐものとなる。
2) サプライチェーン計画 納品元である国から自治体・接種会場へ
サプライチェーンの管理・効率化とコスト削減を図り、サプライチェーンの目詰まり防止を目指す。また需給の予想が難しく、超低温フリーザが配備できる拠点に限界がある状況の中で、解凍したワクチンを使い切ることを目的に、近隣の接種機関での新型コロナウイルスワクチンの融通・調整を支援し「ラストワンマイル」までのサプライチェーンを管理する。
3) ミッションコントロール:
自治体から住民への接種に至る管理と接種状況のリアルタイムの可視化を行うサービス。新型コロナウイルスに対する市民の様々な不安から、判断を躊躇するケースが多く見られるため、本サービスでは、市民の体験・考えを理解し、正しい情報周知を通じて意識を向上させ、ワクチン接種への躊躇を減らすことにより、予防接種プログラムの成果を向上させることが目的。データに基づく接種プログラムのリアルタイム状況把握を支援し、よりよい政策決定につなげる。このサービスはクアルトリクス社と共同のソリューションとなる。
また今回このVCHの3層目のサービス「ミッションコントロール 自治体から住民へ」について、LINEと協業し、日本の自治体や市民のニーズ にあわせたカスタマイズを行うとともに、「自治体向け新型コロナワクチン接種安心サポートサービス」を提供する。
リモートワークの浸透にともない本社を移転
また鈴木社長は、SAPジャパンはコンカーとともに本社移転をおこなう理由についても語った。2021年4月にSAPジャパン東京本社を、2022年8月にはコンカー銀座オフィスを三井物産ビルに移転する予定だ。「アンケート調査によると、社員は同僚との共同作業やお客様のミーティングを求めている。オフィスを社員の就業スペースではなくコラボレーションの場にすることで、アフターコロナ時代の柔軟な働き方を実現する」(鈴木社長)という。