ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は、新たなネットワーキングへの移行に関する2021年の展望を発表した。
IT部門はネットワークに生じるボトルネックの解消に奔走している
2021年に入り、世界中の企業が新たな働き方を模索する中で、企業ネットワークもその在り方の大きな変化に直面している。この背景には、在宅勤務者が増えたことや、オフィス系アプリケーションなどのパブリック・クラウドの利用が拡大し始めていることがあるという。これを受けて、企業内やインターネット上のトラフィックが増大し、既存のネットワークに様々なボトルネックが生じているとしている。
アナリストでバイス プレジデントの池田武史氏は、こうしたトラフィックの変化に対応する選択肢としてクラウド型セキュリティ・ゲートウェイが採用されており、新たなネットワーキングへの移行が始まっていると述べている。
ガートナーが国内企業を対象に2020年9月に実施した調査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が企業ネットワークに与える影響に対処するために優先した作業について尋ねている。最優先した作業として上位に挙げられたのは「インターネット接続の契約帯域の増速」「セキュリティ・ゲートウェイ機器のクラウド型への移行」「VPN装置の増強」の3つ。優先度を問わず最も多くの回答を集めたのは、「セキュリティ・ゲートウェイ機器のクラウド型への移行」だったという(図1参照)。
2020年1月の同調査では、クラウド型セキュリティ・ゲートウェイを採用した企業は10%程度だった。COVID-19の影響によってその採用は確実に加速し、2024年までに、新たなネットワーキングへの移行が進み、クラウド型セキュリティ・ゲートウェイを採用する企業は60%を超えるとガートナーは予測している。
クラウド型のゲートウェイは新たなネットワーキングにおいて重要な役割を担う
こうしたクラウド型ゲートウェイなどで構成される新たな市場を、ガートナーはセキュア・アクセス・サービス・エッジ(SASE)として定義し、多くの企業が注目し、導入すべきソリューションとして提唱しているという。しかし、多様なテクノロジが織りなすこのソリューション全体が成熟するまでには、5~7年はかかるとしている。
池田氏は、「今後も在宅勤務を前提とした環境の整備を進める企業や、クラウド型のオフィス系アプリケーションを利用する企業は増加するとみられます。また、今後は社内外の幅広いビジネスをデジタル化することも求められます。その際に最も重要なのは、パフォーマンスとセキュリティのバランスを取りながら、様々な接続を俊敏に変化させていくことです。クラウド型セキュリティ・ゲートウェイは、こうした新たなネットワーキングに移行する上で重要な役割を担うテクノロジです」と述べている。
新たなネットワーキングへの移行は様々なチャレンジをともなう
IT部門が従来のオンプレミス中心の企業ネットワーキングからクラウド中心の新たなネットワーキングに移行するには、様々なチャレンジがともなうという。移行を進めるに当たって事前に知っておくべき5つのポイントは、以下のとおり。
- オンプレミスとクラウドのハイブリッドを前提とした移行を進める
- スモール・スタートによって安定した移行を実現する
- 運用しながら変化させていく時代に合わせたスキルセットを獲得する
- ポリシー中心のネットワーキングへのチャレンジを理解する
- 様々なテクノロジの組み合わせで解決するチャレンジを理解する(SASE、VPN、ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス[ZTNA]、ソフトウェア・デファインドWAN[SD-WAN]の関係など)
池田氏のコメント
市場では、ゼロトラストや『脱VPN』といったキーワードでもこうした変化が盛んに訴求されています。その一方で、いつまでに何をすべきかといった観点をおろそかにしたまま検討を進めるケースも見られます。現時点ではテクノロジの成熟度が不十分で発展途上であり、今後はさらにベンダーの統廃合も起こると予測されます。IT部門は、大きな変化を理解しつつも、今すぐに解決すべき課題への対処を優先することが重要です。在宅勤務環境を支えるクラウド型のリモート・アクセスVPN(ZTNA)への移行や、トラフィックが集中しがちなプロキシを提供するクラウド型ゲートウェイ(セキュアWebゲートウェイ[SWG])などから導入し、新たなネットワーキングへの移行を始めるとよいでしょう。
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