理化学研究所(以下、理研)と富士通は、理研が量子コンピュータおよび関連する基礎理論・基礎技術・ハードウェア・ソフトウェアの研究開発に取り組む目的で4月1日に設置した「量子コンピュータ研究センター」内に「理研RQC-富士通連携センター」を開設した。
本連携センターでは、理研が取り組む超伝導回路を使った量子コンピュータの先端技術と、富士通が保有するコンピューティング技術、顧客視点に基づいた量子技術の応用知見を統合し、共同で超伝導量子コンピューティングの実用化に向けた研究開発を行うという。具体的には、1000量子ビット級への大規模化を可能とする、ハードウェア、ソフトウェア技術の開発や、実機を活用したアプリケーションの研究開発を行うとしている。
両者は、本共同研究開発において、各技術レイヤーの研究を総合的かつ効率的に推し進め、求解が困難な社会課題の解決に貢献する、誤り耐性のある超伝導量子コンピュータの実現に向けた基盤技術の開発を目指すという。
昨年10月に発表した超伝導量子コンピュータに関する共同研究を、新たに開設した、理研RQC-富士通連携センターを通じてさらに発展させ、誤り耐性のある超伝導量子コンピュータの実現に向けて、組織ミッションを明確化するとともに研究開発体制を強化。本連携センターにおいて共同で研究開発した成果は、創薬、材料などの実応用だけではなく、新しい物理現象や原理の解明に向けて、広く社会に普及させ、国内外の科学技術の発展に貢献するとしている。
理研RQC-富士通連携センターについて
- 名称:理研RQC-富士通連携センター(RIKEN RQC – FUJITSU Collaboration Center)
- 所在地:理化学研究所 量子コンピュータ研究センター内(埼玉県和光市)
- 設置期間:2021年4月1日から2025年3月31日まで(2025年4月以降も継続予定)
研究内容
超伝導量子コンピュータハードウェアの研究
超伝導量子コンピュータを1000量子ビット級へと大規模化することを念頭に、量子ビットの製造におけるばらつきの改善や、周辺部品および配線部の小型化と低ノイズ化、パッケージやチップの低温実装などの基盤技術の研究開発を行う。また、これらのハードウェアに関する要素技術の研究成果を統合し、超伝導量子コンピュータ試作機を開発し、要素技術の有用性を検証する。
超伝導量子コンピュータソフトウェアの研究
量子コンピュータを動作させるために必要となるミドルウェアおよびクラウドコンピューティングシステムの開発、アプリケーションを実行するためのアルゴリズムの研究開発を行う。これらの研究により開発した超伝導量子コンピュータ試作機において、量子化学計算アルゴリズムと量子エラー緩和技術を統合した、量子アルゴリズムを実行することにより、実応用でのエラー緩和技術の有用性を検証。また、並行して、量子エラー検出などの基礎的な実証実験も行い、量子エラー訂正機能を実現するための課題の抽出と技術の改善に取り組む。
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