矢野経済研究所は、国内のサブスクリプションサービス市場を調査し、主要・注目カテゴリーの市場動向、参入企業動向、将来展望を発表した。
市場概況
2020年度のサブスクリプションサービス国内市場規模(7市場計、食品・化粧品類の定期宅配サービス分野含む)はエンドユーザー(消費者)支払額ベースで、前年度比28.3%増の8,759億6,000万円。2021年度は同13.8%増の9,965億円を予測している。
サブスクリプションサービス市場は、デジタルコンテンツ分野と食品・化粧品類の定期宅配サービス分野を除くと、まだ小規模な分野が多いという。これまでサブスクリプションサービスを提供するプレイヤーを同社が調査してきたなかで、多くの事業を抱えるサービス成長の課題は「認知が進んでも利用が進まない」ことであったとしている。しかし、2020年にコロナ禍となって以降、生活様式や働き方が大きく変わったことで市場も変わってきているという。
2020年度の各分野で共通しているのは、新規ユーザーがサービス登録だけでなく、実際にサービスに加入し、サービスを体験したという点。コロナ禍で様々な行動が制限されたことで、これをきっかけに利便性の高いサブスクリプションサービスの試用が進んだと考えられるという。各社では無料サービス等の積極的なキャンペーン展開により、新たなサービスユーザーを大幅に獲得している。
このため、有料ユーザー数の増加に必ずしもどのサービスも直結したわけではないが、これまで難しかった“認知から利用”への移行に成功しているという。2020年度はサブスクリプションサービス利用のきっかけづくりになった年になったとしている。
注目トピック
コロナ禍により注目を集める多拠点居住サービス
多拠点居住サービス市場は、“地方との交流”や“デュアルライフ”など特定の目的を持つ人に向けたサービスを中心に、ニッチな市場として成長していく流れであったが、コロナ禍となった2020年以降は、人々の生活様式や働き方が変わり、注目を集めているという。
コロナ禍直後で人の移動が減少し、テレワークが定着しはじめた時期は自宅で過ごす人々が増えたことから、一時的にサービスの稼働を大きく落とした事業者もみられた。しかし、緊急事態宣言が明けた6月以降からは、テレワーク場所として都心部から離れた拠点を利用したいというニーズが高まっており、業績を回復させているという。都市部近くの周辺エリアに拠点を持っていた事業者も郊外・地方拠点の開拓を進めている状況で、多くのサービスで拠点数が増えている。
このほか、2020年度のトピックとして、宿泊施設の参入が挙げられるという。コロナ禍によりインバウンド(訪日外国人客)が激減したことへの対策として、宿泊施設を月額制サービスとして提供するホテル等が登場している。ただ、これら施設のサービスは今後、コロナ禍の収束や東京オリンピック・パラリンピック開催により宿泊需要が戻ることが想定されるため、そのタイミングで終了するという。
将来展望
2020年から続くコロナ禍により、各市場では様々な影響がみられるものの、これをきっかけに新規ユーザーを取り込むことに成功したサービスは多い。コロナ禍によりユーザー数を落としたサービスもあるが、コロナ禍の収束とともに既存ユーザーが復帰、さらにコロナ禍をきっかけにサービスに加入したユーザーが上乗せされるといった相乗効果でサービス拡大につながるとしている。
これらのことから、コロナ禍収束後は多くのサービスで本格的なサービス拡大フェーズに入ると考えられ、国内のサブスクリプションサービス市場全体は、引き続き堅調に成長していく見通しだという。
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