矢野経済研究所は、国内データ分析関連人材規模を調査し、現況やデータ分析関連人材職種別の動向、および将来展望を明らかにした。
市場概況
各種センサーやスマートデバイス等の普及により膨大なデータを収集、分析することで、これまでにない知見を含めた課題解決方法への期待が高まっているなか、データをもとに意思決定を行い、経営に生かすデータ・ドリブン経営を打ち出す企業が増えてきている。こうしたなか、データ分析関連人材(分析コンサルタント、データサイエンティスト、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャー)が注目されており、なかでもデータサイエンティストは最も重用される人材だとしている。
現下、データ分析関連人材を取り巻く環境整備が進んでいる。制度面では、営業機密などの産業データ、個人情報ともに法環境が整ってきているという。また、教育面においては、内閣府の「AI戦略2019」を踏まえ、人材の輩出に向けて小中高の学習指導要領を改訂したほか、大学においてもデータサイエンス学部・大学院の設置やデータサイエンス教育の強化に向けた取組みが進むなど、短期・中長期的な教育環境の変革に取組んでいる。
企業の動向としては、現在、早急にデータ分析関連人材の体制を構築すべく、中途採用の動きが活発化しているものの、当該人材そのものは全般的に不足している。そのため社内のシステムエンジニアや理系人材を中心に、リカレント教育を通じて人材育成する動きが活発化している。
IT事業者は優秀な人材確保の仕組みづくりが、ユーザー企業ではデータ活用に向けた動きが加速
大手IT事業者を中心に、主に中途採用希望者や優秀な大学院生などを対象に、高額な年俸を提示する採用プログラムなども打ち出し、優秀な人材の確保を積極的に行っている。また、新卒採用者向けには社内向け研修としてデータ分析などに向くプログラミング言語であるPython(パイソン)研修をはじめ、様々な研修の整備、充実化を図っているという。
一方、製造業や小売業をはじめとしたユーザー企業は、データ・ドリブン経営の浸透を図るべく、データサイエンティストをその指南役として位置づけ、データサイエンティストの育成と併せて、現場の従業員を対象にしたデータ分析関連の研修の整備にも力を入れる傾向にある。このほかデータ分析で先行する金融業界では、データサーエンティストを活用した分析支援サービスの提供を開始するなどの先行事例がある。
このようにユーザー企業では、社内での業務効率化やデータを活用した製品の改善のほか、社外向けにはデータ分析を軸とした新規ソリューションを提供するなど、積極的なデータサイエンティストの活用に向けた動きが目立つ状況だとしている。
また、IT事業者やユーザー企業のデータサイエンティスト育成を支えるべく、教育事業者の動きも加速している。大学の子会社やデータ分析に強みを持つ事業者を中心に経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座認定制度(Reスキル講座)」を背景として、多くの教育プログラムが認定を受けており、データサイエンティストの育成を強力に後押ししているという。
将来展望
2023年度の国内データ関連人材規模(人数ベース)は141,900人に達すると予測する。また、データ関連人材について職種別(分析コンサルタント、データサイエンティスト、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャー)にみると、AIやIoTなど分野を問わず、データ分析案件が増えていることから、いずれの職種も伸びていくと考えられるとしている。
さらに、IT事業者、ユーザー企業ともにデータサイエンティストの人材採用、および育成に向けて引き続き積極化していく点に加えて、データサイエンティスト支援ツールが多く登場することにより育成のハードルが下がる点や、モデルをシステムに落とし込むアーキテクチャが増加していく点などの理由から、今後データ関連人材規模は拡大していくという。
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