東京海上日動火災保険、NTTデータ、スタンデージ、トレードワルツの4社は、新たな貿易決済の仕組みの実現に向けた実証実験を実施。結果を踏まえ、貨物の代わりとして用いる電子B/L(船荷証券)とデジタル通貨(または暗号資産)を同時に交換する、世界初となる仕組みの実用化に取り組むことを発表した。2023年度中の事業化を目指すという。
貨物と代金の交換を行う貿易取引においては、旧来から貨物の代わりとして用いるB/L[※1]と代金の交換は行われてきた。一方で海外取引の場合、B/Lと代金を同時に交換することができず、いずれかの債務不履行のリスクが発生するため、リスクヘッジのコストが必要になっているという。そこで4社は、電子B/Lとデジタル通貨(または暗号資産)が今後国際的に普及すると、デジタルデータである双方を同時に交換できる可能性が生まれると考え、実証実験に至ったとしている。
実証実験の概要
1.内容
実証実験ではブロックチェーン技術を活用。貿易プラットフォームで電子化されたB/Lとデジタル通貨(または暗号資産)の同時移転が可能であることを確認した。
NTTデータは、B/Lや保険証券、Invoiceなどを電子化する貿易プラットフォーム「TradeWaltz」と、異なるブロックチェーン間で情報交換ができる仕組みを、スタンデージは暗号資産の移転技術をそれぞれ提供したという。
2.実証期間
約4か月間(2021年8月~2021年12月)
期待される効果
1.国際売買のリスクの除去
貿易代金を前払いする場合には、買い手が貨物を受け取れないリスクがあり、一方で後払いであれば、売り手が代金を受け取れないリスクがあるとしている。電子B/Lとデジタル通貨(または暗号資産)であれば、同時交換が可能となり、これらのリスクがなくなるという。
2.輸出入者の貿易コスト低減
貿易代金に関するリスクを回避するには、第三者(銀行、ファクタリング会社、保険会社など)がリスクを引き取り、その対価としてのリスクプレミアムを収受するが、同時交換であればリスクプレミアムは不要になると想定されるとしている。
3.中小企業の貿易取引の活発化
中小企業には、技術力や特色があるにも関わらず、代金前払いに応じてもらえないために、海外の新規顧客開拓が進まないという課題があったという。こうした問題を解決し、中小企業へも貿易取引の裾野を広げることができるとしている。
4.貿易の平易化
債権債務の同時履行によって貨物の所有移転が明確になることで、債権債務履行の時間差ゆえに生じていた、国際売買契約や法律上の問題を解消するという。
[※1]船荷証券(Bill of Lading)のこと。運送品引渡請求権(運送人から貨物の引渡しを受ける権利)を表象すると同時に、物権的効力(貨物の所有権を示す)もあわせせ持つ有価証券。
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