住所と一緒に同姓同名を区別
WindowsやUNIXで一般的なディレクトリ構造のファイルシステムの場合、システムが世に出た初期段階において、ファイルの修飾子の前の部分の制限が8文字と少なく、ファイル名として利用できる組合せの数が限定的であった。従ってホスト系サーバーのような水平的なファイルの配置方法よりもディレクトリを分けることでファイルを区別する方法が重宝された。
ディレクトリによる管理は、分類が容易になるというメリットをユーザーにもたらしたが、同姓同名ファイルの存在を肯定する運用形態となったため、同じ名前のファイルの区別をするためには、フルパス名(Full Path Name)と呼ばれるルート・ディレクトリから繋がる全てのディレクトリ名とファイル名を記述したものがファイルの明確な区別のために用いられる。
C:\User\ Packages\Data\aaa.dat
D:\temp\private\aaa.dat
上記例ではaaa.datという同じ名前のファイルが2箇所のディレクトリに存在しているが、フルパス名で表記しているため、その違いが明確化できる。世の中に同姓同名の人間が居ても、それほど実社会では困らないのは住所や電話番号、生年月日などと共に名前をセットにして個人を特定しているからに他ならない。フルパス名での表記は住所氏名をセットで明記した方法であると言える。また、逆に考えると、aaa.datというファイル名は短縮された簡易表記名にしか過ぎず、フルパス名で記載された名称が本来の正式名称であると捉えることもできる。
引越しをすると行方不明に
この方式の大きな制限事項として、一度あるディレクトリに配置したファイルを他のディレクトリやディスクに移すことが困難になるという点が挙げられる。個人利用のパソコンであれば自分でファイルを移動させたことを普通は記憶しているので、まあなんとか問題なくファイルの移動は可能となるが、複数のユーザーが利用するサーバーともなるとそうはいかない。誰かが勝手にファイルを別の場所に移動させたりすると大きな不都合が生じてしまう。
これは操作としての移動行為ができないと言っているわけではなく、ファイルを移動させた結果、今までそのファイルをアクセスしていたプロセスやプロシージャー、バッチ・ファイル、プログラムなどが正常に稼動しなくなってしまうという意味だ(図6-8)。配置先の移動を勝手に行なうということは、家族や友人、知人に黙って引越しをしてしまうようなものだ。いつの間にか居なくなっていては連絡のつけ様がないので行方不明と同じであろう。引越しの連絡は手間がかかっても滞りなく行なわなければならない、

このような事態に対応するためには、プロセスやプロシージャー、バッチ・ファイル、プログラムなどに記録された住所であるファイル配置先のディレクトリ名を書き換えてやらねばならない。住所(配置先ディレクトリ名)と氏名(ファイル名)でデータを確実に参照する方式である以上、この変更は致し方ない運用負荷なのだが、あるファイルがどんなプロシージャーやプログラムから使われているのかを記録した情報が、残念ながらシステム的には存在しないため、この作業は結構手間のかかる仕事となる。加えて人的な変更ミスの発生も考慮せねばならないため、一般にこのような変更は避けたいと思うのが人情であろう。
システム的に対応させる方法も一部ある。例えば移動先のパス名をOSに登録する方法や、ショートカットやリンクと呼ばれるファイルの痕跡を残した上で移動先を参照させるやり方などが存在する。しかしこれら手法も本質的な問題を解決しているわけでは無いので、この制約については留意しておく必要がある。










