今回は、3つの決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)のつながりを理解していただきます。ビジネスプランを考えるとき、売上高や費用に関連する計画は考えることができても、必要資金はいくらか、どのくらいの設備投資が必要か、その資金は借りる(借入金)のか、出資(資本金)なのか、などを考えるのは苦手な人が多いようです。なぜならそれらは、貸借対照表とキャッシュフローに関連する内容だからです。今回は、3つの決算書の関係を簡単な事例で考え、プラン全体をどのように俯瞰するかを解説します。木(損益計画)ではなく、森(3つの決算書の関係)を見ていただくために必要な計数感覚です。
3つの決算書を使って投資計画の採否を判断することが重要
損益計算だけでは、ビジネスプランは不完全です。今回はこの点を説明しましょう。前回の記事で解説した、計数感覚を磨く4つの切り口の3番目、すなわち、「経営分析の手法を活用して、あるべき数字を考える」であげた例を参照してください。販売した商品の原価(売上原価)7,200万円は損益計算書の情報、在庫の原価1,000万円は貸借対照表の情報、合計8,200万円は仕入支出としてキャッシュフローの情報でした。このように仕入・販売計画だけでも、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の3つの決算書の情報を使って計画する必要があることを確認してください。
この点を本質的に理解いただくために、次の問題を考えてみましょう。
工場などの設備投資に200億円をかけビジネスをスタートさせます。8年間で工場設備を減価償却(年間減価償却費25億円=200億円÷8年)する計画です。損益予想は図1の通りです。この事業は「推進する」と決定していいでしょうか。
判断に当たっては、会社数字としての視点から考えてください。税金も考えません。ヒントとして、一般的に推進するか否かの分岐点は、3年目で単年度黒字、5年間で累損(累計の損失)が解消するかという点です。

この記事は参考になりましたか?
- 新規事業計画に役立つ「経営分析・管理会計」の考え方・活かし方連載記事一覧
- この記事の著者
-
千賀 秀信(センガ ヒデノブ)
公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア