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週刊DBオンライン 谷川耕一

Oracleはクラウド「だけ」のビジネスには興味なし

 今週は、Oracleの話題を。先週、米国オラクル・コーポレーションのシニアバイスプレジデントでチーフ・コミュニケーション・オフィサー ボブ・エバンス氏が来日、最近のOracleのコーポレートメッセージを語った。彼は、いわゆる広報部門のトップ、CEOであるラリー・エリソン氏に直接レポートする立場にある。そして、Forbes.comに自ら定期コラムを執筆するなど、裏方の広報担当と言うよりも自らメッセージの発信源としても活動している。

ビッグデータやモバイル、ソーシャルを活用するには既存アプリケーションの刷新が必要

エバンス氏
エバンス氏

 現状、多くのITベンダーが、トレンドキーワードとして「ビッグデータ」「モバイル」「ソーシャル」を挙げる。Oracleはこれに加え「Internet of Things」、さらに「アプリケーションの刷新」を挙げる。最後のアプリケーションの刷新は、Oracle独自のキーワードと言えそうだ。

 ビッグデータ、モビリティ、ソーシャル、Internet of Thingsによって、今後のITの世界は、消費者がより力を持つようになり、大きく生まれ変わるだろう。しかしながら既存のITシステムは、その新しいITの世界には対応していない旧式アプリケーションで構成されている。なので、新たなトレンドを企業が現実のものとしビジネスに活用するには、旧式なアプリケーションを刷新する必要があるということだ。そのための最適なプレイヤーが、ITに必要な要素をフルスタックで提供するのがOracleだと言う。

 もう1つエバンス氏の指摘で興味深かったのが、ソーシャルの部分。「ソーシャルは、ソーシャルメディアではなく、ソーシャルビジネスになってきています」とのこと。つまり、消費者がソーシャルネットワークを活用するだけでなく、企業内で新たなソーシャル的なコミュニケーションを行うことも活性化する。ソーシャルネットワークを重要視するベンダーが多い中、さらに広い範囲でソーシャルというキーワードを捉えているのがOracleということだろう。

 「企業は、ソーシャルメディアに積極的に参加しないとリスクになります。ビッグデータについては、多くの企業が活用するための取り組みを行うと言っています。新しいアプリケーションは、すべてモバイル向きに作ることになるでしょう。そして、ほとんどのビジネスリーダーが、より迅速に動きイノベーションに向かっていくために、クラウドを選択するでしょう」(エバンス氏)

Oracleはクラウドだけを見ているのではない

 この日、時間を割いてエバンス氏が説明したのが、クラウドについてだった。Oracle Cloudのサービスは、10,000社の企業、2,300万以上のユーザーが利用している。そして、SaaSプロバイダー上位10社のうち9社で、インフラにOracle Databaseを利用していることも強調した。さらに、ExadataやExalogicはクラウドを実現するのに最適なプラットフォームであり、Oracle Database 12cとJavaというプログラミング言語も最も適したソフトウェアだと言う。

 Oracleのクラウドサービスそのものの優位性については、SaaSだけでなくPaaS、IaaSとすべてを取り揃え、それが同じアーキテクチャで動いていることだとエバンス氏。アーキテクチャはオンプレミスとも同じなので、クラウドだけでなく顧客にはさらに自由な選択肢を与えると。

 つまりは、Oracleはクラウドのビジネスですでに実績もあり、当然ながら注力もしているのだということだ。とはいえ、先日発表されたガートナーのPaaSのMagic Quadrantにも、Oracleは登場していない。少なくとも世間では、Oracleをクラウドの主要プレイヤーと見なしていないのではとエバンス氏に質問してみた。それに対しエバンス氏は、次のように答えた。

 「Oracleは、クラウドについてはより包括的なアプローチをしています。クラウドだけの市場ではなく、企業の長期的な成功を目指しているのです。クラウドだけをやっている企業は、それはそれで素晴らしいものがあるでしょう。しかし顧客は、クラウドだけを使っているわけではありません。オンプレミスとクラウドの両方を使っています。全面的にクラウドに移行するのではなく、共存させているのです」

 つまりは、SaaSだけ、PaaSだけ、IaaSだけではなく、それらに加えプライベートクラウドも、さらにはオンプレミスをも組み合わせた領域に注力するのがOracleだと言う。なので、PaaSだけのシェアには、あまりこだわっていない。現状のクラウドのシェア数字には、プライベートクラウドはカウントされないし、たとえばWindows Azure上、Amazon Web Services上のOracleもカウントされない。でも、顧客は現実的にそういったものを求めている。だからこそ、Microsoftやセールスフォース・ドットコムとの協業も始めている。

 SaaSやPaaSといった言葉が登場してから、すでに長い時間が経過した。それらを取り巻く状況は、当初から変化している。その変化に、言葉やその定義が追随できていないとエバンス氏は指摘する。そういったこともあってか、ガートナーやIDCは新しいカテゴリーとして「インテグレーテッド・システム」を設けた。Oracleとしては、むしろこのカテゴリーのほうが、自社方向性に合っているとのことだ。

 このエバンス氏の回答は、ちょっと負け惜しみのようにも聞こえる。とはいえ、企業がクラウドだけを選択していないのは確かだ。ハイブリッド・クラウドというカテゴリーがあれば、Oracleはどのようなポジショニングになるのか。それはちょっと、気になるところ。ここ最近になって、SoftLayerを買収したIBMが、クラウドの世界で一気に頭角を現してきた。そんな状況を見ているあのラリーが、このまま黙っているだろうか。さまざまな方策で、クラウドだけの領域でもOracleがビジネスを拡大してくる可能性が、大いにあるのではと思うところだ。

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五代目ExadataはDBaaSを実現するプラットフォーム

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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