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週刊DBオンライン 谷川耕一

クラウドの他社サービスに対する自社優位性はいったい何で示せばいいか


 これからはクラウド市場ではPaaSやSaaSに注目が集まるという主旨の記事を、ここ最近書いている。もちろんIaaSがなくなるわけではなく利用はさらに増えていくだろう。けれど、顧客のクラウド選択のポイントはIaaSの上に載るPaaSやSaaSに重きを置くようになるはずだ。つまりどんなクラウドのプラットフォームを選ぶのかではなく、どんなアプリケーションをどのクラウドプラットフォームで開発し動かすのかだ。

HPがOpenStackに最適化したCloud FoundryベースのPaaSを提供開始

 そんな注目のPaaSの世界へ本格参入を発表したのがHPだ。「HP Helion Development Platform 」というCloud Foundryベースのアプリケーション開発、実行基盤を発表した。「大企業でも中小企業でも公共機関でも、クラウドによる多くのメリットを提供できるラインナップを持っているのがHPです。End-to-Endに提供でき、OSやハードウェアに特定されず幅広いものがあります」と言うのは、HPのアジアパシフィック&ジャパン クラウド部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのアマン・ニール・ドカニア氏だ。プライベートからパブリックまで幅広いラインナップがある中で、HP Helion OpenStackは100%オープンソース・アプローチを取りたい顧客向けのIaaSとなっている。さらにHelion OpenStackに最適化したPaaSが、今回発表したHP Helion Development Platformだ。

アマン・ニール・ドカニア氏
アマン・ニール・ドカニア氏

 「これを使って、クラウドネイティブなアプリケーションを作れます。大手だけでなく中小企業も活用できます。サービスプロバイダーも、このIaaSとPaaSを組み合わせてサービス展開することができます」(アマン氏)

 日本HP クラウドビジネス統括本部 統括本部長の春木菊則氏は、HP Helion Development Platformは単なるクラウド上の開発環境ではなく、実行環境を含んだPaaSであることを強調する。これは、アプリケーションの開発者の生産性を格段に向上するもので、開発者はハードウェアのことから頭を切り離して開発だけに専念できるようになるとも言う。

 このHelion Development Platformは、「プライスが売りだ」と春木氏。「これはある意味、価格破壊だと考えています」とのこと。他社であれば数100万円かかるところを、HPでは24時間サポートを付けても96,000円(1年間使用権)から利用できる。平日サポートだけでよければ52,000円で利用可能で、IaaSであるHelion OpenStackとセットにしても物理サーバーあたり18万1,000円という低価格でHPは勝負することになる。

 HPは、クラウド戦略の中でPaaSの実現方法としてなぜCloud Foundryを選択したのか。HPとしては、IaaSのところではOpenStackに準拠するのはすんなりと決まったそうだ。その上で、PaaSはどうするのか。HPではデータベースなどのPaaSで主要な部分を占めることになるミドルウェア製品を持っていない。そうであれば、その部分についてはなるべくオープンソースにシフトしやすいものを選ぶべきだと考えた。さらに、クラウドを進めていく上ではコミュニティやエコシステムが大事だとも考え、結果として選んだのがCloud Foundryとなった。Cloud Foundryには、IBMやEMCなどのエンタープライズで実績あるベンダーが参加しており、彼らとともに構成されるエコシステムがあることもCloud Foundryを選んだ理由となっている。

春木菊則氏
春木菊則氏

 「皆さんにはどんどんHPのクラウドを使って欲しい。また、さまざまなOpenStackのトレーニングも提供し、OpenStackを扱うエンジニアの育成も図っていきます」(春木氏)

 価格破壊だとも言う低価格での提供、そしてオープン性の高さというポイントが顧客に受け入れられれば、クラウド市場では後発とも言えるHPも市場で存在感を示すことができるかもしれない。

業界標準的なものを安くではなくベンダーならではの強みを

 ところで、HPに限った話ではないが、OpenStackやCloud Foundryのようなある種の業界標準的なものに対応することは、本当に顧客に対して響くメッセージとなるのだろうか。顧客がクラウドサービスを選定する際に、これらは大きく影響するだろうか。いち早くこういったものに対応することは、もちろん価値があるだろう。とはいえ、たとえばCloud Foundryに参画しているベンダーであれば、おいおい自社サービスはCloud Foundryに対応することになる。そうなれば、その部分は基本的にベンダー間では差がなくなるはずだ。

 もちろん、業界標準的なものを「早く安く出す」ことは、ビジネスチャンスを逃さないためには重要だ。とはいえ、顧客は本当にそれらを基準にしてそのサービスを選んでくれるだろうか。今回のHP Helion Development Platformについても、OpenStackに最適化していてCloud Foundryベースであることを、ことさら気にするユーザーはそれほど多くないのではと思うところだ。

 選択の際には、価格は重要なポイントであることは間違いない。その上で、むしろHPのもともとの強みでもあるアプリケーション・テストのところなどをPaaS上でも簡単に素早く安価に使える。そういったHPならではの特長のほうが、PaaSを利用したい開発者には受けるのではないだろうか。ベンダーとしてクラウドサービスの優位性をどこでどう発揮するのか。オープン性や安定性、さらには十分な性能などはあって当たり前。その上でベンダーならでは強みをどうやってアピールできるのか、それこそがPaaS選択の決め手になるはずだ。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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