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エンタープライズITはライセンスビジネスからクラウドへ――新年度事業戦略にみる変革の流れ

2015/07/08 06:00

 先週は、日本オラクルと日本マイクロソフトの2社が、新年度の事業戦略発表を行った。2015年10月で日本オラクルは創業から30周年を迎える。「これからが第二創業期です。とはいえクラウドでNo.1になる目標は変わりません」と言うのは取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂氏だ。このクラウドNo.1を目指す第二創業期のキャッチフレーズが「POCO(ポコ)」、これは「The Power Of Cloud by Oracle」の略だ。

Oracleのライセンスビジネスからクラウド型への変革は必然

 「社長に就任した当初は“ハードウェアの杉原”だった」と振り返る杉原氏。そのイメージを覆すためにも、昨年度はまずコアコンピタンス、つまりはデータベースのビジネスをしっかりとやることにした。その結果、データベース市場ではこれまでより高いシェアを獲得、業績数字も目標を少し超えることができたと。

 データベースのビジネスが見えてきたところで、これからはPOCOだ。

 「POCO、ポコ、これを口にするとみんな笑顔になります。POCOではユーザー目線で顧客により近づきます。POCOの戦略では、いったいクラウドで何ができるのかを伝えるところから始める。そしてSaaS、PaaS、IaaSという3つのクラウド全てを提供するOracleだからこその価値を提供します」(杉原氏)

 日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 杉原博茂氏
 日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 杉原博茂氏

 もう1つ注力するのはハードウェアのビジネスだ。「ミッションクリティカルなものを誰がやるのか、これはもうOracleしかない。我々の使命です」と杉原氏。このハードウェアのビジネスについては、杉原氏自身が先頭に立って牽引する。とくにストレージのビジネスに関しては、今年度は強化すると宣言する。

 また今年度の方針としてさらに掲げたのが、エンタープライズ営業の強化と地域ビジネス成長に向けた支社体制の再編、拡充だ。日本オラクルの支社体制は、昨年度まではむしろ縮小傾向にあった。支社自体の規模を縮小し、どちらかと言えば中央から日本各地のビジネスをコントロールする体制をとってきた。それが今年度は打って変わり支社体制を改めて強化、日本を7つの支社に再編する。従来の中部支社は東海支社と北陸支社に、西日本支社を関西支社と中国・四国支社に分ける。

 オンプレミス系の大規模案件であれば、支社体制を絞り込んでなるべく中央で集約したほうが均質的で効率的な営業活動が行えたのかもしれない。しかし、クラウドを強化するとなると比較的短期間で小さい案件も確実にフォローしていく必要がある。これを効率的にやるには、中央集中型よりは分散型のオペレーションのほうが効果的だと判断したのだろう。この支社体制がうまく回り出せば、今期は地方発のクラウド事例の発表が増えるかもしれない。

 データベースのビジネス、言い換えればこれまでのライセンス販売型のビジネスから、Oracleはクラウド型のビジネスモデルに本心から移行するつもりがあるのだろうか。POCOのようなユニークな表現はマーケティング上のたんなる賑やかし的なもので、実際はデータベースのライセンスやOracle Exadataの販売などで着実かつ十分にやっていけると考えているのではないだろうか。

 業績数字の主たる部分が、一気にクラウドに移行することはないかもしれない。しかし、個人的にはクラウド型のビジネスモデルへの変革はOracleにとっては必然ではと思っている。これは世の中がクラウドに向かっているからだけではない。オンプレミス型のライセンスビジネスで高いシェアを獲得したからこそ、必要なビジネスモデル転換だと考える。今後の本格的な転換期には、一時的に業績が悪化するかもしれない。それでもPOCO路線は堅持されぶれずにクラウド転換するしかない。

 というのも、データベースのようなソフトウェアは、オンプレミスで利用していれば数年ごとに「更新」という一大移行イベントがやってくるからだ。そのタイミングこそが、同社がもっともビジネスを失うリスクにもなる。ハードウェアの入れ替え時期か、あるいはソフトウェアのサポート切れか。それらのタイミングで、ユーザーは新しいデータベースを導入する。この際の移行の手間と費用はユーザーが払うことに。規模が大きければそれは莫大なものとなる。

 なので、実際に乗り換えるかどうかは別としても、このタイミングで安いオープンソースベースのソフトウェアなりへの乗り換えを検討するのは今や当たり前だ。顧客を逃がさないためにOracleは、魅力的な新機能なりを出し続けなければならない。いったん他のソフトウェアに移ってしまえば、再びOracleに戻すのには相当な苦労がいる。

 Oracleのクラウドサービスに移行してくれれば、更新時にビジネスを失うリスクは大きく削減されるだろう。乗り換えが容易なIaaSでもない限り、そもそも更新という一大イベントはほとんどなくなるはずだ。SaaS、PaaS、IaaSが同じように提供できるのがOracleクラウドの価値と言うが、見方を変えれば3つ揃っているのは既存システムを苦労せずにクラウド化できる価値でもあるだろう。なのでIaaSは移行のために必要なものであって、本格的なクラウドビジネスをこれでやろうなんて、Oracleはほぼ考えていないのだ。

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

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連載:週刊DBオンライン 谷川耕一

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