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「野望は世界中の車をUberにすること」ベニオフ×カラニック対談

 セールスフォース・ドットコム CEO マーク・ベニオフ氏とUberのCEO トラビス・カラニック氏との対談が行われた。

顧客からの信頼を得るにはリアルタイムの需要予測が必要

ベニオフ氏(左)とUberのCEOのカラニック氏(右)
ベニオフ氏(左)とUberのCEOのカラニック氏(右)

 「できるだけたくさんの車を出して、安く、早くが一番大事」と語るカラニック氏。乗りたい顧客の要求に対し車がどれくらい確保できるのか。需要と供給に応じ料金が変動するのが、Uberのサービスの特徴となっている。需要に確実に応えることが、顧客からの信頼につながる。そしてできるだけ短時間でこれを実現するには、さまざまなテクノロジーが必要だとのこと。

 また信頼性を確保するために、顧客が利用したドライバーをレイティングすることも行っている。このレイティングの仕組みがあるからこそ、顧客は安心してUberを利用できる。結果的にレイティングの高い人だけがUberのドライバーとして仕事を続けることができ、レイティングが低ければそのドライバーは淘汰される。これによりドライバーのスキルや質を一定以上の水準に保つことができるのだ。

 需要に対しタイムリーに対応するには、顧客の要求をリアルタイムに予測しているからだとカラニック氏は語る。

 「どれだけの需要があり、それに対しどれだけのドライバーをどこから回せばいいのか。リアルタイムに予測してヒートマップを作って対応しています」(カラニック氏)

 このリアルタイムな予測を行うために、Uberではさまざまなデータの分析を行っている。このあたりが、Uberのコアがテクノロジーだと彼らが言う理由にもなっているのだろう。「需要が発生する前にどうやってその需要を導き出すのか。予測するのに15分かかっていては遅いかもしれません」とカラニック氏。つまり15分も予測にかかれば、顧客はUberを捕まえるまでにそれ以上の時間を待たなければならない。それではタクシーよりも便利な仕組みとは言えないのだ。

 タクシーよりも便利で信頼性が高いのに、サンフランシスコ市内ではUberの料金はタクシーよりも平均で40%安い。これは柔軟性のある料金体系の恩恵でもある。料金の柔軟性の実現もまた、需要予測ができるからこそだ。

 「いろいろな破壊が、タクシーの業界で起こっています」とベニオフ氏は言う。Uberのビジネスを進める際にカラニック氏は、最初はタクシードライバーの側から課題を見つめていたと言う。サンフランシスコのタクシードライバーの雇用状況はかなり過酷だ。12時間シフトで働き、車両も相当なお金を払ってレンタルしなければならない。ドライバーの状況を改善するのに、Uberの仕組みが考え出された。さらには、Uberの車を利用する側の人たちにもメリットがあると評価を受け、Uberのビジネスが上手くいくことを確信する。

 Uberでは新たなサービスも始めている。「Uber Pool」は相乗りのサービスだ。同じ方向に行く人同士でUberに相乗りすることで料金が安くなる。さらには「乗り合わせた人とコミュニケーションをとれるメリットもあります」とカラニック氏。相乗りで車が減り渋滞対策にもなる。「Uber的には儲からないけれど、2台の車が1台になります。これは我々の目的であるUberを安価にすることにまります」とカラニック氏。個人が車を持つよりも安くする。儲からなくても駐車場の問題を解決し、公害対策にもなると言う。

車がすべてUberになれば渋滞もなくなる

 「かなり大きなインパクトを持って会社は成長してきました。これだけ大きくなると、周りからの期待度も高まります。それにどう対処するのか。私は、エンジニアなのでものを作ってそれを評価してもらうことで期待に応えてきました。Uberの5年間でも、それをやってきました」(カラニック氏)

 この先、Uberという会社、Uberというビジネスがどこに向かっていくかも考えなければならないと言う。世界中のどんなところであっても、信頼の交通機関が必要だ。それをできるだけ安く提供し、すべての人が使えるようにしたいとカラニック氏は言う。

 「道路を見たら、そこにあるすべての車がUberになるようにするのが我々のミッションです。サンフランシスコの街が、すべてUberになれば渋滞もなくなるでしょう」(カラニック氏)

 料金をもっとも安価にするには、Uberというサービスを世の中でポピュラーにする必要がある。そのためには、信頼が重要だと改めて指摘する。

 さらにUberでは、ユニークなサービスも始めている。「Uber Food」は、食べものを運ぶサービスだ。5分以内で食事を運ぶことができる。許認可制で規制の厳しい日本では、Uberのサービスが広く展開できる余地はないだろう。しかし、このUber Foodのような、UberのITインフラを活用するサービスであれば普及の可能性はありそうだ。たとえば日本のバイク便や自転車便のようなサービスならば、Uberの仕組みをそのまま活用できるだろう。元々バイク便などは、ライダーの車両を持ち込みことも多いのでUberのビジネスモデルともよく似ている。

 「Uberのプラットフォームがあれば、さまざまなことができますね、社会貢献的なこともできるのでは」とベニオフ氏。これに対してカラニック氏は、社会全体に大きく貢献するようなものではなくUberではオフィスのある地元で社会貢献をやるようにしているとのこと。

 「クリスマスがくれば、Uberでプレゼントを配るなどの活動ができます。地元でやればそこには心があります。世界中のすべてのオフィスで、何ができるかを考えてやります」(カラニック氏)

 カラニック氏はまた、Uberの将来的な話として、インテリジェンスの活用やロボット技術などについても言及した。

 「Googleが自動運転車をやっています。こういうものにはさまざまな可能性があると思います。事故を減らすことができ、アルゴリズムで運転したほうが渋滞はなくなるはずです」(カラニック氏)

 こういう社会における革新を実現するためにも「技術を作る会社」が必要だと指摘する。

 「最終的には、街中にロボットが溢れることになるかもしれません。今は技術的な面での過渡期です。それが終われば、世の中は確実に良くなっているはずです」(カラニック氏)

 ビジネスのアイデアさえあれば世の中に革新が生まれるわけではない。革新のためには技術的な進化こそが大事だ。技術的な進化により、街中の車がUberのロボットカーだらけになる日も、そう遠くないのかもしれない。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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