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クラウド活用でテレワークを自ら実践するセールスフォース・ドットコム

2015/12/07 17:22

 2014年6月に実施した内閣府の「農山漁村に関する世論調査」によると、地方への移住願望が2005年の20.6%から2014年には31.6%へと大きく上昇している。さらには、まち・ひと・しごと創生本部が実施したウェブ調査でも、東京在住者の40.7%が地方への移住を「検討している」か「今後検討したい」と回答しているとか。人々の地方移住への思いがあっても、実際にそれに踏み切る人はそう多くない。生活の場、仕事の場として地方を選択できないのは、仕事がない、医療や教育の機関がないのではとの不安があるからのようだ。

政府が本気でテレワーク地方創生に乗り出した

 先週行われた「Salesforce World Tour Tokyo 2015」では、「地方創生とテレワーク」と題した特別セッションが行われた。

 「テレワークで、地方への流れをどう作っていくのか。テレワークを中核としたICTの利活用が必要です」

 こう語るのは、総務大臣政務官 輿水恵一氏だ。

総務大臣政務官 輿水恵一氏
総務大臣政務官 輿水恵一氏

 現在、総務省ではふるさとテレワーク推進事業を全国15カ所で実施しており地域実証実験が進められている。セールスフォース・ドットコムでは、このうちの1つである和歌山県白浜の実証実験に参加し、実際に数名の社員が白浜のオフィスに異動し業務を行っている。

 白浜以外でも北海道の北見では、北見工業大学との連携も取り入れたふるさとテレワーク推進事業を行っているとのこと。北見では企業などが実際に研修、合宿なども行っておりコストも安く充実したものができると企業からも高い評価がある。

 ふるさとテレワーク推進事業の座長を務めた野村総合研究所 理事長の谷川史郎氏は「今回のプロジェクトを進めるにあたり、最初に悩んだのは個人には地方での仕事は楽しそうだが、これを会社としてやる意義があるかどうかだ」と語る。

野村総合研究所 理事長の谷川史郎氏
野村総合研究所 理事長
谷川史郎氏

 日本の労働人口は1990年代にピークを迎えている。2000年代以降は工場の海外移転などもあり、さらには少子高齢化などによる供給減などでも労働人口そのものが国内では減る傾向にある。1990年くらいまでは仕事に対して人材が余っている状況だった。これが2010年以降は仕事に必要な人材量に対し供給が足りていない。

 この働く人が足りない状況をどう解消していくのか。1つが出産、子育てなどを機に仕事を辞め再び働いていない女性の活用がある。もう1つが離職をする人そのものを減らすこと。こちらは、昨今話題となっている親の介護のために仕事を辞める介護離職を減らすのもある。これら女性の活用、介護離職の歯止めにテレワークを活用できるであろうと谷川氏は見ている。

セールスフォース・ドットコムも実際にクラウドでテレワークを実践

 さらに、地方創生は世界的な傾向からも進めるべきと指摘する。たとえば、GDPの規模を見れば東京は世界最大の都市。けれどもそこに住む1人あたりのGDPで比べると、ニューヨークの60%くらいになってしまう。これは東京という都市は、日本の中では生産性が高い地域ではあるが、世界的に見ると1人あたりのGDPから考えれば、生産性は高くない。そうだとすれば、東京の地価はまだまだ安いことになる。

 「今後東京の地価はもっと高くなって、生産性の高い企業しか残れなくなるでしょう」と谷川氏は予測する。

 一方で、たとえばスウェーデンの通信機器会社であるエリクソンの本社組織は首都ストックホルムにある。エリクソンの従業員は12万人ほどいるが、うち首都にある本社で仕事をしているのは500人に過ぎない。海外にはこういった傾向を持つ大手企業が数多くあるのが現状だ。対して日本は東京の本社に大勢の従業員がいる。結果的に東京集中という状況を作っていると谷川氏は指摘する。この本社集中を解消するのが、テレワークの活用というわけだ。

 「女性が活躍する会社として評価されている企業では、積極的にテレワークを活用している状況もあります。介護離職にもテレワークは対策になる。企業はテレワークを行うと生産性はどうなるのか、うまく業務が回るのかが気になっています。いまその不安の部分を、全国で実証実験して確認しているのです」(谷川氏)

 セールスフォース・ドットコム 取締役社長 兼 COOの川原 均氏は、クラウドは地域支援に役立つと言う。実際、米国本社のあるサンフランシスコに行っても、テレワーク拠点の白浜に行っても、クラウドがあるのでスマートフォンさえあれば業務ができると言う。PCすら重たいので持ち歩いていないのだと。

セールスフォース・ドットコム 取締役社長 兼 COO 川原 均氏
セールスフォース・ドットコム
取締役社長 兼 COO 川原 均氏

 多くの地方自治体は、IT予算を増やすどころか減らしている。そんな中でも、サービスは向上させなければならない。そのためにもクラウドは有効な手段だ。千葉市で実践している「ちばレポ」、山梨県小菅村の「給付金支給システム」など、すでに自治体でクラウドを活用している事例を川原氏は紹介した。小菅村の例では、人口の少ない小さな村であっても、大きな自治体が作ったシステムをクラウドならそのまま流用できている。「クラウドは、地方支援の大きな柱になる」と川原氏は見ている。

 とはいえ昨年までは、地方創生に自分たち自ら足を踏み込むには至っていなかった。そこで今年は、自分たちも実証実験に参加。白浜のオフィスを10月1日にオープンした。ここでポイントとなっているのが、セールスフォース・ドットコムだけでなくパートナー企業も一緒に白浜に行くことになったこと。結果的には白浜にパートナー数社も集まってテレワークを行う「セールスフォースビレッジ」ができ上がった。

 「各社が白浜で共同生活をすることで、新しい何かが生まれるのではと期待している」(川原氏)

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

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連載:DB Press

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