Shoeisha Technology Media

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

業務に「楽しさ」を追求したら、HUEという世界初の人工知能型ERPシステムができあがった 

2016/01/29 06:00

 これまで企業が利用するERPのアプリケーションなどに「楽しさ」が求められることはなかった。なので多くのベンダーはGoogleやfacebookなど、コンシューマが利用しているサービスの技術のキャッチアップはしなかった。SOAなどシステムインテグレーション系の技術の進化はあったが「クラウドにフィットさせると言ったアプローチはおざなりでした」と語るのはワークスアプリケーションズ パートナー グローバル R&D 担当の小松宏行氏だ。

ベストなアプリケーションのための徹底的な技術の洗い出し

ワークスアプリケーションズ パートナー グローバル R&D 担当 小松宏行氏
ワークスアプリケーションズ
パートナー グローバル R&D担当
小松宏行氏

 新たにベストなアプリケーションを作りたい。そのために、ワークスアプリケーションズでは現状においてエンタープライズで使うための技術の洗い出しを徹底的に行った。

 「コードレベルから作り直すことにしました。洗い出しの中では機械学習やAIなども出てきたし、スピードについても改めて考え直しました。もちろん、最新の開発言語もあれば、オープンソースソフトウェアのテクノロジーについても列挙しました」(小松氏)

 この洗い出し作業には100人規模の人間が携わり、2年ほどの時間もかけた。そんな中で、方針としてクラウドベースのアプリケーションにすることが決められた。クラウドでサービスするとなれば、重要となるのがスケーラビリティだった。クラウドで必要なスケーラビリティを確保するために、データの格納と管理を行うする仕組みとして、リレーショナルデータベースを捨てる決断をする。新たに選んだのは、オープンソースソフトウェアのNoSQLデータベース「Cassandra」を使うことだった。このCassandraについては、実際にプロトタイプを作り採用を決めた。さらに解析の部分ではHadoop、Sparkを、学習や予測の部分にはElasticsearchといったオープンソースソフトウェアの技術も積極的に採用することとした。

 もう1つ重要だと考えたのがユーザーインターフェイス(UI)だった。「UIが印象を決めます」と小松氏。PCのユーザーインターフェイスはもちろん、今後の利用シーンの拡大を考えモバイルデバイスをターゲットにしたUI設計を行っている。このUIを洗練させていく際に活用することにしたのが、AIの技術だった。

 「UIの入力にも出力にも、AI的な要素を入れたほうがスピード感が出ると判断しました。なので、昨今のAIブームがあったから新製品にAIを入れたわけではありません」(小松氏)

 こうやって生まれた新たなERPアプリケーション「HUE」を、ワークスアプリケーションズでは「世界初の人工知能型ERPシステム」と位置づけている。機械学習などのAI技術は、現状ではさまざまな領域で使われつつある。「AIがより一層効果を発揮するのは、エンタープライズの人事や会計といった、より狭い領域だろうと考えています」と小松氏。幅広いコンシューマの世界よりも、人事業務なりにターゲットを絞ることで、実施すべき作業や処理などはかなり予測はしやすくなるのだ。

 AIを活用したHUEの機能の1つに「Magic Series」と呼ばれるものがある。これは、人手により入力の作業をなくすことを目指した機能。Webページの会社概要の表示や、あるいは会社案内パンフレットのPDFなどがあれば、その画面をコピー&ペーストするだけで会社名、住所、連絡先などの会社の基本情報をERPの画面に自動入力してくれる。

 コピーする際に、いちいち会社名や住所を別々に選択し、それぞれのカラムに貼り付ける操作は必要ない。全画面をまるっとコピーすれば、HUEのAI機能がその内容を判断し適切なカラムに情報を自動で振り分けてくれる。この仕組みでは、日々ユーザーの利用を学習し精度を高めていくのだ。「この機能があれば、業務作業の中でルーチーン的なものはほぼ自動化できます。UIの部分はAI的な機能がかなり効果を発揮するものです」と小松氏。このMagic Seriesはあらゆるフォーム、あらゆる入力に応用できる機能とのことだ。

 また、入力作業中の画面において、次にどんな内容を入力すればいいかを的確に予測、推奨する機能もある。各業務シーンに応じて、ユーザーが次に入力すべきものを予測して提案するのだ。文字を入力するたびに関連情報から全文検索して候補を表示する。膨大なログから瞬時に検索し予測することで、ユーザーの入力の作業を大幅に効率化できる。これについても、利用状況を学習することで精度を高めユーザーに最適化していくものになる。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。


著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

バックナンバー

連載:DB Press

もっと読む

All contents copyright © 2007-2017 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5