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P&GはExcelを採用、コカコーラはExcelではダメと判断―テラデータ「PARTNERS」開催

2016/09/12 11:12

 今週は、テラデータのユーザー会イベント「PARTNERS」の取材で米国アトランタに来ている。PARTNERSは、テラデータ主催のマーケティングイベントではなく、テラデータのユーザー会が主催するユーザーのためのコミュニケーションの場となっているのが特長。なので、テラデータユーザー企業による、数多くの事例セッションが行われる。参加している人たちはユーザー同士で情報交換を行い、より良いテラデータの活用方法を探っている。

P&Gはグローバルの顧客データの分析ツールにExcelを活用

 ヘアケア製品、化粧品、洗剤、衛生用品などを製造販売する世界最大の消費財メーカーP&Gでは、BI、CRMの活用について説明した。同社のBI、CRMの活用レベルは、最初は赤ん坊が「はいはい」するようなものだった。そこから、歩けるようになり、次には走り、最後は飛ぶというステップアップを18ヶ月間で行っている。

 P&GのCRM Analytics LeaderのMarta Mielniczuk氏は「CRMで消費者の行動を把握しています。そのためにさまざまな試みを行っています」と語る。P&Gには300以上のブランドがあり、製品は180カ国以上で販売されている。Webなどを用いたプロモーションキャンペーンを随時展開しており、それらの結果から得られるデータのソースは1,500以上もあるとのこと。

P&GのCRM Analytics LeaderのMarta Mielniczuk氏

P&G CRM Analytics Leader
Marta Mielniczuk氏

 データソースの中には、品質のいいものもあればそうでないものもある。データの発生頻度の高いものも低いものもある。そして月に1億通ものEメールが配信されている。そのような状況の中で、グローバルに顧客の状況を把握できるレポーティング環境が欲しい。そんな要求からBI、CRMの活用が始まっている。

 P&Gでは、キャンペーン管理を行いアナリティクスを行うために「1,Consumer Place」というシステムを、Teradataを用い構築している。同社では世界中で各種キャンペーンを実施しており、その結果から得られる顧客のアクションに関するデータがこれには取り込まれる。地域によって言語も異なり品質も違うデータを、このシステムに集約できるようにしている。

 1,Consumer Placeを活用し、グローバルレベルのCRMとアナリティクスを実現するには最初にビジョンが必要だ。ビジョンを掲げ、それに向けたロードマップを整備する。ロードマップを明確にすることは、CRMへの投資を経営層に理解してもらうためにも必要だ。

 P&Gでは、BI、CRMを行うユーザーツールとして、Microsoft Excelを活用しているとのこと。OLAP分析をするためにBIツールのTableauとの連携もあるが、既存のExcelを活用することで全ての人が1,Consumer Placeを容易に利用できるようになっているのだ。

 「Excelのデータ分析のポテンシャルは、かなり高いものがあります。なぜExcelなんだという声もありますが、分析を行う人たちの多くは、アナリストでもなければデータサイエンティストでもありません。Excelには、データ分析を行うのに必要なものが全て入っています。P&GではExcelがすでに全ての人に配布されており、ユーザーもこれが自分たちにとって必要なツールだと認識しています。最初に正しくシートを作れば、Excelでより高度な分析ができます」(Mielniczuk氏)

 ところで、1,Consumer Placeは日々データが更新されるトランザクションシステムになっている。このトランザクションシステムのデータと処理は、固定的なものではない。世界中のユーザーから、新たな要求が日々発生している。それらを受け入れ、1,Consumer Placeのシステムは変化を続けているのだ。変化を続けるために必要となるのが、アジャイル開発とDevOpsでの運用アプローチだ。「アジャイル開発で変更しています。デイリーのペースでアップデートしています」とMielniczuk氏。

 ここまでの取り組みでBI、CRMの活用レベルは、はいはいから歩くレベルにステップアップした。さらに走るレベルにステップアップするには、セルサービス型のBIが必要だと指摘する。セルフサービス型のBIを実現すると、世界中のユーザーからさまざまな要求が発生しクエリーは複雑化する。複雑なクエリーが数多く来ても、結果を迅速に返せなければセルフサービス型のBIは実現できない。

 この課題を解決するためには、リアルタイムのデータベースアクセスを実現する必要がある。P&Gでは十分なデータベースの検索性能を確保するために、世界中のユーザーが1,Consumer Placeのデータベースをどのように利用しているかの把握を試みた。その結果、発生するクエリーの80%程度が同じタイプのものだったことが分かったのだ。

 「同じタイプのクエリーをなるべくまとまったものにして、対応するデータにはインデックスを付け処理の高速化を図っています。利用者の多くは、データサイエンティストではありません。なので一般のユーザーが、とにかく使い安いものにする必要があります。そのためシンプルなものにする必要がありました」(Mielniczuk氏)

 BIの環境を構築、運用するのにアジャイル、DevOpsのアプローチをと言うのは、これまであまり出てこなかった発想かもしれない。とはいえ、考えてみればこのアプローチはごく当たり前だろう。BIで扱うデータは、P&Gのようにどんどん変化するものだ。データは固定化されていて同じレポートの作成を繰り返せばいいのであれば、それはBIではなくたんに過去の結果を見やすくして蓄積しているに過ぎない。ビジネス状況が変化すれば、BIで分析したいことも変化する。そして分析結果に基づいてアクションを起こせば、ビジネスの環境も変化する。これを繰り返すためには、BIの環境はアジャイルで開発しDevOpsで運用せざる得ないだろう。

 BI環境の変更をウォーターフォール的に時間をかけてやっていたのでは、今の時代、競争に乗り遅れてしまう。アジャイルでBIへの新たな変更要求を取り込んでいく際には、ユーザーの要求をミニマムに捉え、素早く実装するようにしている。このミニマムな単位での要求実装を繰り返していける体制作りが、重要なのだろう。

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにし...

  • DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

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