未経験者2名を迎えてスタートした自社開発体制
――自社開発するための組織をどのようにして作っていったのですか。
2008年10月1日の人事異動で、店舗から3人を情報システム部にスカウトし、2人をエンジニアとして、1人をホスト運用の担当者としました。いずれも業務はわかるけどコンピュータはわからない、大学時代も経験はないという「ど素人」です。初めは良品計画さんの子会社から2人エンジニアを派遣してもらい、教えてもらいつつ開発を進めていきました。通常はコンピュータのプロに業務知識や要件を伝えて作ってもらいますが、逆に、業務知識や要件を熟知している人にコンピュータを教えて作ったわけです。
そうして初めて作ったのが「商品カタログ」でした。前者のやり方なら、業務や必要な機能について説明したり、要件を整理したりするのに1~2カ月はかかり、約半年かかるといわれたものです。それが、たった2週間で「できちゃった」んです。さらに店舗スタッフが最も切望していたものだったことから、社内の評価も上々。予想以上の好パフォーマンスに「これはいける」と確信を得ることができました。
――普通は研修期間などがあって、その後業務に入るのが一般的ですが、いきなり開発をはじめたのはなにか意図がありますか。
いや、意図も何も「やってみよう」と。そもそも「研修が必要」なんて幻想なのではないでしょうか。自社で開発チームを作るにあたっては、そうしたモヤモヤしていたことを解決しなければ難しいと考えていました。
その1つがプログラマーのスキルです。というのも、ベンダー時代に感じたのが、最新技術が登場するとそれを使うのが「優れている」と評価されることでした。当然ながらエンジニアは複数の言語をマスターし、新しい技術にも貪欲で、勉強熱心でした。でも、まったく経験のない人間が自社開発するとなると、一気にPHPだのSQLだの覚えることが多くて大変。一から覚えているようでは、手を動かせるまでには半年はかかるでしょう。それが絶対に必要ならば、社内にエンジニアがいない東急ハンズでは、自社開発など望めません。
そんな時に出会ったのが、「ユニケージ」でした。これなら30~40ほどのコマンド を覚えればすぐに何かを作ることができる。そこでスタッフには「1カ月で覚えて、3カ月で何か簡単なものを作ってほしい」と伝えました。業界の常識からしたら、「無茶ぶり」に見えるかもしれません。でも、業界の常識を知らない人間は、「そんなものかな」とがんばるわけです。自社開発におけるエンジニアには、「どんな言語を使えるのか」より「何を作りたいのか」「そのためにはどうすればいいのか」がわかっていればいいのだと実感しました。