日立製作所(以下、日立)は、企業におけるAIエージェントの導入効果を最大化するためにAI特有の運用課題を解決し、健全なガバナンスと継続的な運用改善を伴走型で支援する「Hitachi Application Reliability Centers(HARC)for AI」を10月7日より提供開始した。

同サービスは、クラウドネイティブな運用改善を推進するSRE(Site Reliability Engineering)の手法に基づき、運用変革に伴走するマネージドサービスであるHARCの実績と、日立社内で培ったAI運用ノウハウをあわせて、AIを業務に本格適用する顧客向けに、AI特有の運用課題の解決を支援するもの。 特徴は次のとおり。
事業変化に応じて、AIエージェントの判断の正当性といったガバナンスやコストを観測し継続改善
ガバナンス
AIの業務活用を拡大するうえで、ガバナンスは非常に重要なテーマだという。日立は、グローバルで活用している評価フレームワークR2O2.aiに基づき、社内での実践経験も踏まえて、適切な観測とチューニングの支援が可能であり、継続的な改善により業務品質の向上に貢献するとした。
コスト評価
同サービスでは、FinOpsプラクティスに対するKPIの設定・追跡により、IT部門・財務部門・利用部門でFinOpsチームとして共通した評価基準を策定するためのアセスメントとアドバイスを提供し、事業環境の変化を見越した運用が可能。実践に向けたKPIの継続的な可視化や定期的な評価と調整のアドバイスにより、FinOpsの成熟度の向上に伴走するとのことだ。
AIエージェントのデータアクセス制御やセキュリティリスクへの対応を強化
AIエージェントのデータアクセス制御
AIエージェントが連携する環境での複雑なデータアクセスの認証・認可をMCP(Model Context Protocol)などのオープン標準プロトコルにより、統一的に管理・制御することが可能。日立はCloud Native Computing Foundation(CNCF)の関連プロジェクトや国内外コミュニティを通じ、認証・認可技術の標準化と普及に貢献し、最新の知見やノウハウをもとにAIのデータガバナンスを強化するという。
これにより、顧客はAIエージェントの連携で複雑化するデータアクセスの認可を事前に定義して監視できるため、意図しないデータの流出をあらかじめ防止するほか、AIエージェントの認証情報の改ざんによるなりすましなどを防止できるとしている。
セキュリティリスクへの対応
セキュリティエンジニアが、日立グループ内の専門組織と連携し、セキュリティリスクの可視化と対策、セキュリティ監視とインシデント発生時の対応などを支援。これにより、AI適用にともなう新たなリスクが発生した場合も迅速な対応が可能だとしている。
AIエージェントやアプリケーションの改善サイクルの加速
AIエージェントやアプリケーションの開発・運用の効率化に向けて、リソースや実装済みの機能を可視化し、その活用ルールを定めることでエンジニアの二重開発などを防ぐために、API基盤や開発基盤の整備と継続的な改善が重要だという。そのような基盤の設計・実装と継続的な改善には、プラットフォームエンジニアリングの高度なスキルが必要とのことだ。
そうした対応を日立のエンジニアが支援することで、アプリケーション開発のエンジニアは、業務ロジックの開発や改善に集中できるという。その結果、エンジニアのスキルに依存することなく生産性を向上し、AIエージェントやアプリケーション開発・改善のサイクルを加速するとのことだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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