Impervaは米現地時間4月13日、年次レポートである「Imperva Bad Bot Report」の2021年版を発表した。
本レポートによると、全ウェブトラフィックリクエストの40.8%がボットを発信源としており、レポートが初めて発行された2014年以降で最高値を記録したという。また、2020年は悪質なボットトラフィックも過去最高となり(25.6%)、一方で実際の人間によるトラフィックは5.7%減少したとしている。
Advanced Persistent Bots(高度で持続的なボット)は、2020年を通じて悪質なボットトラフィックの大部分(57.1%)を占めていた。こうしたボットは、ウェブサイト、モバイルアプリ、APIに対して高速な不正使用、悪用、攻撃を行うという。
2020年の業界別動向として、トラフィック内でボットが占める割合が最も高かった業界は通信・インターネットサービスプロバイダー(ISP)(45.7%)で、その多くはアカウントの乗っ取りと競争価格のスクレイピングを目的としている。技術レベルの高い悪質なボットに関しては、旅行業界での割合(59.7%)が最も高い結果になったという。加えて、官公庁のウェブサイトへのボットトラフィックも増加しており、アカウント乗っ取りのほか、事業者登録リストや有権者登録のデータスクレイピング目的でボットが展開されている。
その他ハイライト
- 新型コロナウイルスのワクチン予約サイトもボットの標的に:Imperva Research Labによると、ヘルスケア関連のウェブサイトに対する悪質なボットトラフィックは、2020年9月以降372%増加した。最近の傾向として、米国ではより幅広い年齢層にワクチンが提供されていることもあり、1時間あたり1万2,000のボットによるリクエストを確認しているという
- 世界的なパンデミックに乗じる「スキャルパーボット」:商品を買い占める「スキャルパーボット」は、2020年の前半に、マスク、消毒液、洗剤、自宅トレーニング器具などの大規模な在庫の買い占めに使用されている
- モバイルブラウザもボットの標的に:モバイルブラウザになりすます悪質なボットは、2019年の12.9%から2020年には28.1%まで増加。また、Imperva Research Labによると、モバイルISP経由で展開された攻撃の件数は過去4年連続で増加し続けているという
- アカウント乗っ取り詐欺にボットが関与:自社サイトへのログインページを持つ多くの企業が、クレデンシャルスタッフィング・クレデンシャルクラッキング攻撃を受けているという。2020年には、全ログインのうち34%が、悪質なボットによるものだとしている
- ゲーム機を大量に買い占める「グリンチボット」:新型ゲーム機の予約が始まった2020年9月~10月に、全世界の小売サイトへの悪質なボットトラフィックが788%増加したという
- 良質なボットすら脅威に:良質なボットトラフィックが1年間で16%増加したことも、懸念となっている。良質・悪質を問わずボットトラフィックによってサイトが汚染されると、ウェブパフォーマンスは劣化し、正規ユーザーが必要な情報やサービスにアクセスしにくくなるとしている
- 悪質なボット攻撃の標的国・ホスト国、ともにトップは米国:悪質なボット攻撃の標的となった国を見ると、米国が7年連続で1位(37.2%)、2位中国(8.3%)と3位英国(6.9%)が続いた。日本は4位のロシア(3.9%)に次ぐ5位(3.4%)だったという。悪質なボットは、標的と同一国から展開されるケースが多く、悪質なボットのホスト国も米国がトップ(40.5%)となっている。ここでも日本は2位中国(8.3%)、3位英国(6.9%)、4位ブラジル(4%)に次ぎ5位(3.7%)となっていた
Impervaのアプリケーションセキュリティ部門戦略ディレクターであるEdward Roberts氏は、「過去8年のレポートからわかる通り、悪質なボットはインターネットに被害を与え続けており、年々より高度かつ繊細になっています。2020年は世界的なパンデミックもあったため、悪質なボットは新たな市場を標的として繁栄し、その影響は一般の消費者にまで及んでいます。2020年末のグリンチボットによる混乱は、ボットを看過するとどのような事態になるかを示しています。この問題が今後拡大する可能性は高く、2021年に悪質なボットが企業やセキュリティ担当者にとって大きな懸念事項となるのは間違いありません。風評被害や金銭的損害の原因となる不正行為にボットが関与するケースも増えており、企業にはこうした脅威から自社のウェブサイト、アプリケーション、APIを保護するためのセキュリティ対策が求められます」と述べている。
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