SAPは、市民開発者(コーディングのスキルを持たないビジネスユーザー)とプロ開発者の能力を強化する新しい製品とサービスを発表した。
今回発表された新しいツール、統合、組み込みAI、学習プログラムは、従業員や就職希望者に対し、クラウドファーストの時代に求められる新たなスキルの構築をサポートすることで、人材不足を緩和するという。なお、本発表は11月16~18日に開催された、同社のグローバル開発者カンファレンス「SAP TechEd」で行われたとしている。発表の内容は以下のとおり。
誰もが開発者に
「SAP Business Technology Platform(SAP BTP)」で利用できる統合的なローコード/ノーコード開発ツールを発表。市民開発者とプロ開発者の両方に対応し、新しいアプリケーションの開発、既存のアプリケーションの拡張、複雑なタスクの自動化を容易にするという。今後、「SAP AppGyver」開発環境によるノーコード開発と自動化の追加、「SAP Business Application Studio」によるローコード開発の強化、「SAP Process Automation」ソリューション(現在プレビュー版)の提供を通じて、従来のIT部門の内外を問わず、組織全体でのテクノロジー人材の発掘を支援するとしている。
また、プロ開発者向けに、SAP BTPの無料枠モデルに「SAP HANA Cloud」と「SAP Integration Suite」を追加。さらに、「SAP Fiori」の新しい「Horizon」ビジュアルテーマも提供されるという(現在プレビュー版)。
柔軟な拡張が可能なエンタープライズソリューションへ
個々の課題に対応する、モジュール型のアジャイルなソリューションによって、ビジネスの統合と拡張を可能にする複数のアップデートを発表。SAP BTPの統合レイヤーであるSAP Integration Suiteの最新のアップデートでは、SAPとSAP以外のアプリケーションを統合するための「SAP API Business Hub」で利用できる、事前定義済みの統合コンテンツとアダプターが追加されるとしている。なお、SAP Integration Suiteは、2021年中にGoogle Cloud Platformでも利用可能になる予定だという。
また、同社はオンプレミスシステムからクラウドへ、ワークロードをほぼリアルタイムで移行できるようにするSAP HANA Cloudの新しい動的拡張機能もリリースする予定だと発表。さらに、オンプレミスの「SAP Business Warehouse」システムから「SAP Data Warehouse Cloud」ソリューションに円滑に移行するための新しい方法と、SAP S/4HANA Cloudの拡張ローカリゼーションオプションを導入するとしている。
ポートフォリオ全体にAIサービスを組み込む
組み込みAI機能を拡張。「SAP Conversational AI」サービスの新機能では、チャットボットの開発と監視をシンプル化して、タスクやワークフローを自動化できるという。また、ニューラルネットワークベースのレコメンドエンジン「Personalized Recommendation」サービスをリリースする計画だとしている。さらに、同社の製品とサービスでAIが活用されることにより、会社間の伝票突合の自動化、ワークフローでの推奨アクションの表示、ビジネス文書からのデータ抽出と加工、学習の提案などが可能になったという。
学生から企業役員まで学習をサポート
「SAP Learning」サイトを刷新し、様々なレベルのSAP開発者が、重要なイノベーション領域のスキルを簡単に習得、および再学習できるとしている。なお、学習は無料で提供されるという。加えて、中等教育機関向けのAIカリキュラムや、SAPのクラウドソリューションを大学や大学教授に提供するプログラムも新設されたとしている。
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