SAPが新たなイベント「SAP Connect 2025」を開催 AI エージェントの方向性示す
「SAP Connect 2025」現地レポート:AIがビジネスアプリケーションアーキテクチャーを変える

米ラスベガス・現地時間10月6日から8日にかけて、SAPは新しい年次イベント「SAP Connect 2025」を開催した。同イベントは、ファイナンス、調達、サプライチェーン、HR、CX部門のリーダーたち相互の「Connect(つながり)」を深めることを目的に行われた、同社初の試みとなる。
SAPが考える「AI時代」のビジネスアプリケーション
世界情勢やマクロ経済の先行きに対する不透明感が続いている。それもさることながら、AIの進化は目覚ましい。AI時代のビジネスアプリケーションはどうなるのか。一部には「SaaSの時代」の終焉を予測する意見もあれば、正反対の声も聞こえる。10月6日、SAP Connect 2025の基調講演のホストを務めたムハンマド・アラム(Muhammad Alam)氏は、SAPの見解を説明した。

まずアラム氏は、「アプリケーション」「データ」「AI」のシームレスな“フライホイール”を回すことの重要性を強調した。これら3つの要素がうまくかみ合わなければ、アプリケーションの統合、データのハーモナイゼーションに余計な労力がかかるだけでなく、セキュリティ対策を講じることも難しくなるからだ。業務ドメイン単位での部分最適化ではなく、グローバルでの全体最適化を実現するためには、3つの要素がシームレスに連携していることが前提になる。
また、AIが企業全体に及ぶ“広範な文脈”を理解できることで、企業にもたらされる価値は大きくなるという。一部のドメインに限定されることなく、すべてのドメインに横断的かつ自由にアクセスできることで、ビジネスユーザーはより適切な推奨事項やインサイトを得られる。そして何より、AIはビジネスアプリケーションを根本的に変革するものであることが重要だ。

アラム氏は、「『AIドリブン・イノベーション』には5つのパターンがある」と指摘する(図1)。1つ目は、「シームレスに組み込まれたAI」。特に複雑なビジネスプロセスをサポートするアプリケーション、あるいは規制コンプライアンス要件への対応が必要なアプリケーションで実例が多い。2つ目は、「エージェントドリブン」だ。これはカスタマーサポートのような特定の機能をサポートするアプリケーション、あるいは機能・ドメイン横断で計画から実行までをサポートするアプリケーションが典型例である。
3つ目は「AIネイティブ」。これは設計時点からAIを使うことを前提として、ゼロから構築された次世代型のアプリケーションであるが、現時点ではまれな存在だ。さらに4つ目、5つ目に「アプリレス」と「ゼロアプリ」がある。前者はアプリケーションが依然として存在しているが、ユーザーが直接アプリケーションにアクセスすることはない状態を指す。これに対して、後者はアプリケーションなしで、AIがリアルタイムに体験を生成するものである。

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この5つのパターンすべてを可能にするのが、「会話型のユーザーインターフェース」だ。アラム氏は、「AIドリブンの『エンゲージメントレイヤー』がユーザーへの機能提供を一元的に担うことになる」とした。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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