ブラックラインとSAPジャパンは、花王が自社の決算業務のプラットフォームとして「SAP Account Substantiation and Automation by BlackLine」(以下、BlackLine)を稼働したことを発表した。
花王の会計財務部門では、EVA導入、ERP導入、IFRS適用など、今日まで「絶えざる革新」を続けてきたが、決算業務や請求書払いなどの分野は遅れをとっており、手作業の処理などが多く残っていたという。このコロナ禍においてテレワークを推進するためには、決算業務プロセスのDXが必要であり、既に花王の欧州・米州の海外部門で導入実績のあったクラウド型決算プラットフォームであるBlackLineの導入を決めたとしている。
導入前の決算業務の課題
決算業務において、以下のような多数の「可視化・統制強化」と「標準化・自動化」に関わる課題があったという。
可視化・統制強化
- 決算作業の進捗状況が見えない
- リモート環境だとコミュニケーションがとりづらい
- 決算情報が散在していて見つけにくい
- それぞれの作業ボリュームが見えない
- 表計算シートで進捗の日付管理をしているが、手間がかかる
- 紙での印刷と押印をしている書類があるが、リモート環境では難しい
標準化・自動化
- 作業が属人化し、ブラックボックス化している
- 決算数字の照合・調整をするシステムや仕組みがない
- 決算時の残業がなかなか減らない
BlackLine導入のフェーズと効果
フェーズ1(2020年10月~12月)
決算に関わる担当者だけで国内に80人以上いる会計財務部門、本社、1工場、1子会社を対象にユーザー数30名で導入プロジェクトをスタート。BlackLineの「タスク管理」と「勘定照合」のモジュールを導入し、「スモールスタート&クイックウィン」を目指したという。
フェーズ2(2021年1月~6月)
フェーズ1の導入成功後すぐにフェーズ2を実施。フェーズ1のプロジェクトメンバーが事務局となり、対象範囲を合計18の工場および子会社へ拡げて、新たに50人のユーザーを追加している。また、「マッチング」と「仕訳入力」のモジュールを導入し、高度な自動入金消込、経過勘定の貸借消込からの勘定内訳明細の自動作成や会社ニーズに応じた自動仕訳の作成を実現している。
効果
BlackLineの導入後、会計財務部門の在宅勤務率は現時点で80~90%を実現。仕訳入力とタスク管理の連動や、押印をなくして紙の印刷を100%削減する目標を達成したという。
今後の展望
現在、決算業務時間の30%削減を目標として継続して取り組んでいるという。今後は、国内シェアードサービス化を進めるととともに、決算情報の一元管理を進め、監査担当者の工数削減を目指し、現場担当者、管理者共に大きな効率化、能率化の支援につなげていくとしている。
花王 会計財務部門 管理部 管理部長 牧野秀生氏は、「BlackLineはERPなどのインフラとは異なり、実際の経理担当者が効率化を実感できるユーザー視点に立ったツールだと思います。特に今回のコロナ禍で働き方が大きく変化する中で、企業としても利用価値が高いと感じています。これまで数多くのプロジェクトに関わってきましたが、プロジェクトを成功させるには、参加するメンバーが高い視座を持ち、期日を設けて取り組むことが大切だと思います」と述べている。
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