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「かくあるべき」から解放を システム障害を激減させた“我が事マインド”とは

第2回:パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長 朝比奈ゆり子氏

 「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げ、多様な生き方、働き方に寄り添うパーソルホールディングス。だが、かつてグループの情報システムを担う部門のメンバーは、圧倒的な業務量に笑えないほど疲弊していた。当時責任者を務めていた朝比奈ゆり子さんは、2020年、ソフトウェア開発の手法の一つであるスクラムを導入。1年足らずで同部門を自律分散型のアジャイル組織へと変革した。「言われたものを作るのではなく、“我が事”としてサービスを作っていける部門になりたい」。そう語る朝比奈さんに、チームづくりで大切にしてきたことを聞いた。

「はたらいて、笑うことなんて、できません」

酒井真弓(以下、酒井):かつての疲弊の原因は何だったのでしょうか?

朝比奈ゆり子(以下、朝比奈):2014年頃、現在のパーソルグループと旧インテリジェンスグループが経営統合するのを機に、グループ各社にERPを展開しました。現在、国内の子会社は39社ですが、当時は約80社あり、まずは突貫でERPを作り、動いたと思ったらまた統廃合を進めるなど、難易度の高いプロジェクトが続きました。それを片手で数えられるほどの少人数でこなしていたのです。

 それに、過去の技術的負債にも苦しめられていました。しばらく前に導入したシステムで不具合が発生し、蓋を開けてみると「何だ、この構成は……」と唖然とするようなこともありました。

 それでも、事業部から新たな依頼があれば「NO」とは言えません。1人で複数案件のPM(プロジェクトマネージャー)をしながら、ERPの導入や既存システムの不具合に対応し、また新たなプロジェクトがやって来る。メンバー全員が無理をしていました。

酒井:そんな中、2019年11月、朝比奈さんがこの組織の責任者に就任されました。

朝比奈:実は、グループ内で新規事業創造を行う新会社の設立に携わっていて、ここからスケールさせていこうとしたタイミングだったのと、社内システムはもう卒業したと思っていたので、しばらくの間は打診を断っていたんです。ですが、「私がこれから立ち向かうのはグループの経営基盤であり、国内で約3万人、グローバルで約6万人のマーケットが存在しているんだ」と気づいたら、「EX(従業員体験)を高めたい」「データ活用にも挑戦したい」なんて、いろんなアイデアが浮かぶようになりました。社内システムがどうこうではなく、従業員向けのサービスやプロダクトを作り、グループ全体に大きな価値を届けたいと考えるようになりました。

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パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長 朝比奈ゆり子氏

「保守がメインの私たちがスクラムですか?」

酒井:2020年にスクラムを組織に浸透させるフレームワーク「Scrum@Scale」を導入されました。目的は何だったのでしょうか?

朝比奈:言われたものを作るとか、システムの面倒を見るとかではなく、“我が事”としてサービスを作っていける部門になりたいと思ったんです。

 ホールディングスの情報システム部門となると、事業の最前線が遠いんです。それに言葉を選ばずに言えば、当時は社内での立場が弱かった。まずは他部門と肩を並べて協業できるマインドを育てる必要がありました。そのために、自分の働きで従業員が便利になり、その先の社会に対して価値を提供できている──そんな自己肯定感を得られる働き方に変えたかったんです。

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酒井:スクラムを導入しようと言ったとき、チームの皆さんの反応はどうでしたか?

朝比奈:ポカーンでしたね。「保守がメインの私たちがスクラムですか?」と。そういうフレームワークはフロントエンドをバリバリ開発する人たちのものというイメージがあったのでしょう。

 でも、そういったマインドチェンジを含めてやりたかったんです。はじめは強引に進めました。「みんな、DevOpsだよ!」みたいな。「僕らDevはやってないですよ」と言われたら、「コードを書くことだけがDevではないのよ!」とか言って。

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Miroに書かれた、メンバーの本音

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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