アリババクラウドは、同社主催の年次開発者サミットにおいて、大規模言語モデルやAI開発ツールの拡充、インフラのアップグレード、そして世界中の開発者を支援する新たなプログラムを発表した。
より多くの基盤モデルと開発ツールを提供
アリババクラウドの独自開発による大規模言語モデルファミリー「Qwen」シリーズの最新バージョンであるQwen2.5シリーズ（パラメーター数は70億〜720億）が、同社の生成AI開発プラットフォーム「Model Studio」を通じてAPI経由で利用可能に。これにより、世界中の開発者がアクセスできるようになったという。加えて、アリババクラウドは視覚認知モデルの「Qwen-VLシリーズ」、画像生成モデルの「Wanx2.1（通義万相）」、音声言語モデル「Qwen-Audio」を含むマルチモーダルAIモデルも開発者に提供を開始したとのことだ。
また、Qwen 2.5-coderモデルを活用したアリババクラウド独自のAIコーディングアシスタント「通義霊碼（Tongyi Lingma）」も利用可能。このAIプログラマーは、コードの補完や最適化、デバッグ支援、コードスニペット検索、バッチ単体テスト生成などの機能を提供するという。これにより、開発者は効率的でシームレスなコーディング体験ができ、生産性と創造性を向上できるとしている。
さらに、Model Studio上では、より多様なAI開発ツールが利用可能になったという。これには、複雑なタスクをサブタスクに分割してワークフローを管理する「Workflow」や、複数のエージェントが協力して計画・実行する「Agent」などを含むとしている。また、外部情報源を活用して生成AIモデルの精度と信頼性を向上させる「RAG」、複数のプロンプト入力に対して同時に応答を生成する「Batch Inferencing」、モデルの自動評価を行う「AutoEval（Automated Model Evaluation）」、モデルのデプロイおよびアプリケーションの可観測性サービスも1月中に利用可能となる予定だという。
AI開発のためのアップグレードされたインフラストラクチャ
AIをはじめとする重要なワークロードを支える強力な計算能力を提供するため、アリババクラウドは、第9世代のエンタープライズ向けエラストリック・コンピュート・サービス（ECS）インスタンスを2025年4月より世界市場で提供開始すると発表。この最新世代のECSインスタンスは、前世代と比較して計算効率が20％向上するなど、性能が強化されているという。さらに、eRDMA（エラストリック・リモート・ダイレクト・メモリ・アクセス）を活用したネットワーク加速により、高性能コンピューティング、検索レコメンデーション、Redisデータベースのサポート性能が最大50％向上するとのことだ。
また、アリババクラウドは「Alibaba Cloud Container Compute Service（ACS）」を、1月より国際顧客向けに提供開始すると発表。同サービスは、コンテナ技術を活用して作業負荷の展開を簡素化・最適化するよう設計されており、コンテナサービスとクラウドコンピューティングリソースを統合するという。これにより、コストや技術的な複雑性が削減され、開発者はインフラ管理ではなくイノベーションに専念できるとしている。
創造性を刺激する新GenAIプログラム
アリババクラウドは、生成AIアプリケーションの構築にQwenモデルを活用するグローバル開発者やスタートアップを支援する専用プログラム「Alibaba Cloud GenAI Empowerment Program」を発表。同プログラムの参加者は、無料のクラウドクレジット、トレーニングワークショップ、テックショーやデモデイへの招待、製品の共同マーケティング機会など、様々なサポートを受けられるという。同プログラムは、開発者やスタートアップが生成AIプロジェクトを加速させると同時に、より広範なイノベーターのエコシステムとつながることを目的としている。
Qwenを活用した最先端アプリケーションを手掛けるグローバル開発者と顧客
日本のAI開発企業であるAxcxeptは、Qwen 2.5 LLMを基にしたオープンソースの軽量AIモデル「EZO」を開発。EZOモデルは、コーディング、情報抽出、数学、推論、ロールプレイ、日本語の文章作成といった分野で最新モデルを上回る性能を発揮すると同社は述べる。低遅延かつ高性能なEZOは、医療や公共機関などの日本市場向けに設計され、安全かつ効率的なAIアプリケーションを提供するとのことだ。
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