矢野経済研究所は、DMP(Data Management Platform)とは、さまざまな販売チャネルにおける顧客の行動データを集約して分析することで、顧客の特徴を明らかにし、広告、メール、DM などのマーケティング施策を最適化するシステムやサービスをさすとしている。
また、MA(Marketing Automation)とは、大量の見込み顧客や既存顧客を一元化し、自動的に評価し、設計したシナリオに基づいて、シナリオを自動実行させ、顧客を個別に育成することで確度の高い商談を創出するシステムやサービスをさすとしている。
1. デジタルマーケティングサービス市場概況と予測:IoT、パーソナルデータが追い風
DMPサービス市場とMAサービス市場を合算した2016年のデジタルマーケティング市場規模は303億1,500万円であった。近年は顧客が商品購入前にその性能・仕様や口コミなどの情報収集・価格比較などをインターネットで行うほか、企業とさまざまなチャネルを持つようになったため、以前と比較すると、購買のタイミングが遅くなっている。これにより、企業は顧客ごとにパーソナライズされたコミュニケーションを行う必要が出てきた。
こうしたなか、パーソナライズされたマーケティングの効率化等を求め、データ主導のマーケティングを行えるソフトウェアに対する需要が拡大している。同市場の成長要因として考えられるのがIoTやパーソナルデータの存在である。IoTに関しては、スマートフォンの位置情報を活用したマーケティングが知られているが、最近は気温や降雨センサーのデータなども活用し、集客につなげている事例もある。
今後、IoTはさらに進展し、取得できるデータの種類と量が飛躍的に増加することが見込まれ、より良い顧客体験(パーソナライズされたコミュニケーションから得られる体験や充足感)を実現する源となるものと考える。
また、パーソナルデータについては、個人情報保護法の改正など、政府が同データ活用に前向きな見解を示している。こうした動きや企業のデジタルマーケティングに対する認知・関心の向上などから市場は引き続き堅調に推移し、同市場規模は2022年には639億円に達し、2016年から2022年までのCAGR(年平均成長率)は13.2%の成長を予測する。
なお、今後の同市場ではチャットボット(自動対話システム)やパーソナライズド(各個人向けに特化した)動画広告、音声マーケティング(AI搭載型のスマートスピーカー等)が注目されている。音声マーケティングについては、スマートスピーカーが国内で一般化する日もそう遠くはないと考えられることから、音声をデータ化し、マーケティングに活用するための早めの対策が必要である。
2. デジタルマーケティングツールの市場動向
2-1 DMP サービス市場:セカンドパーティーデータに注目
2016年のDMPサービス市場規模は57億7,000万円であった。自社や第三者が保有しているデータを活用することで効率良くマーケティングを最適化することに対する意識が高まっていることや、DMPの用途が拡大していることなどからプライベートDMPの構築、またパブリックDMPの利用(複数利用)が進んでおり、2017年には同市場規模は前年比27.2%増の73億3,700万円に達すると見込む。
同市場で注目すべきはセカンドパーティーデータである。政府が顧客情報(匿名加工情報)をビッグデータとして売買するための指針を発表しており、顧客情報を収集している企業ではいずれデータ販売ビジネスを展開できるようになる。解禁時に向け、データの取扱いに慣れたDMPベンダーには新たなビジネス創出の期待がある。
2-2 MAサービス市場:AIでリアルなニーズに応える
2016年のMAサービスの市場規模は245億4,500万円であった。デジタルチャネルが主流になったことで告知や販促、効果測定といった活動を自動化しやすくなったことや、顧客とのコミュニケーションチャネルの多様化、One to One マーケティングに対する注目などからMAおよび周辺サービスに対する需要が拡大しており、同市場規模は2017年には前年比23.0%増の301億9,000万円に達すると見込む。
最高の顧客体験のためにはメッセージを発信するタイミングも重要である。よりリアルな顧客ニーズに応えられるよう、MAベンダーはAIを活用して分析時間の短縮を図るなどの取組みを行うなど、AIの活用に積極的である。また、AIにはこうしたデータの鮮度向上だけでなく、精度向上や顧客行動予測なども期待されている。
なお、今回の発表について詳しくは、矢野経済研究所が発行した「2017年版DMP/MA市場~デジタルマーケティング市場の現状とビジネス展望」に掲載されている。