Matlantisは、汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis」において、特定の元素系における無数の原子配置や組成の組み合わせの中から、未知の安定結晶を高速に発見する新機能「Matlantis CSP(Crystal Structure Prediction)」を提供開始した。
脱炭素・次世代エネルギーといった社会課題の解決には、全固体電池の固体電解質や触媒など、新規無機材料の開発が不可欠だという。これらの材料性能は、複数の元素が複雑に組み合わさって結晶を形成しており、その性能は結晶構造に強く依存するとのことだ。
しかし重要なのは、「理論的に高い性能が出る構造」が、必ずしも「安定に存在できる」とは限らない点だという。無数の候補の中から、高い性能と構造的な安定性を兼ね備えた結晶を実験だけで探し出すことは、多大な時間とコストを要する困難な作業だったと述べている。
シミュレーションによるスクリーニングで「安定に存在し得ない構造」を事前に切り分けできれば、有望な材料を発見するまでの時間を短縮できるようになるとのことだ。
従来のCSP手法には、主に3つの大きな壁があったという。
- 計算時間の限界:DFT計算(電子状態計算)による構造評価は1構造あたり数時間を要し、逆に簡易的な手法では結果の信頼性が不足していた
- 探索の偏り:組成を変化させながら探索を行うと、特定の組成にサンプリングが偏ってしまい、網羅的な探索が困難だった
- 環境構築・設定の煩雑さ:複雑な組成空間を探索しようとすると、入力パラメータの設定や計算環境の管理が複雑で、専門的な知識が必要だった
Matlantis CSPは、Matlantisのコア技術である汎用原子間ポテンシャル(PFP)と独自技術を組み合わせ、上記課題を解決したとしている。
1. ハイスループット構造評価
PFPの活用により、1構造あたり数秒から数分で信頼性の高いエネルギー評価を実現。また、探索過程で発生しやすい異常な原子配置に対しても、エラーで止まることなく、頑健に計算を完遂できる仕組みを導入しているとのことだ。
2. 網羅的かつ高効率な探索アルゴリズム
組成空間全体を探索するために独自開発したアルゴリズムを搭載。多様性を保ちながら幅広い構造をサンプリングすることで、従来のランダム探索と比較して約3~6倍の探索効率を実現し、任意の組成において漏れのない探索を可能にしたと述べている。
※同最適化アルゴリズムには、Preferred Networksが開発する「Optuna」を改良して活用しているとのこと。
3. Matlantis環境に特化した並列処理基盤
数万回に及ぶ試行を短時間で処理できるよう、メモリ・並列処理を最適化。ユーザーは複雑な環境構築を行う必要がなく、「使い始めたその瞬間から」大規模な探索計算を開始できるという。
研究者の「使いやすさ」を追求した機能設計
Matlantis CSPは、実際の材料開発に携わる顧客からのフィードバックを反映し、継続的に改良していくとのことだ。
1. 現場の声から生まれた操作性
- 直感的なインターフェース:専門的な計算環境の構築を不要にし、研究者が本来の目的である「材料探索」に集中できる環境を実現
- 充実のExample:実践的な計算手順を網羅したサンプルコードを提供。自分の系に合わせて元素名を書き換えるだけで、すぐに高度な探索をスタート可能
2. 目的に合わせて選べる2つの探索モード
- 全体探索:結晶構造を一切仮定せず、ゼロベースで未知の新構造を発見するモード。原子数や組成比を固定せず、元素の組み合わせから最適な構造を網羅的に探す
- 置換構造探索:ペロブスカイト構造などの特定の母構造を仮定し、そのサイトを別の元素で置き換えた際の安定性を探索するモード。元素添加の限界予測などに適している
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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