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大手教育会社の情報流失事案で得た教訓──日本発のセキュリティスタートアップ社長が始めたメール訓練事業

単身戦火のイスラエルで起業、そこで出会った元イスラエル軍技術者との出会い

 急増するサイバー攻撃への対策の一つとして、従業員向けに標的型攻撃メールを模したセキュリティ訓練ソリューションを導入する企業が近年増えつつある。一方で、こうしたサービスを提供するのは海外企業が多く、日本の実態に即していないといった声も多い。そうした中、日本のセキュリティスタートアップ企業ながらも同ソリューションを展開するセキュリティ企業がAironWorksだ。同社創業者兼CEOである寺田彼日氏と、元イスラエル国防軍8200部隊出身であり共同創業者兼CTOのゴネン・クラック氏に、同社設立の背景と強みを取材した。

日本の環境に合わせた標的型メール訓練サービスを

 「セキュリティ企業としてスタートしたのは、外部環境と自分たちがもつ強みを考えたときに、『ここしかない』と思って即決したのがきっかけですね」と語るのは、AironWorks創業者兼CEOの寺田彼日(てらだ あに)氏だ。

AironWorks 共同創業者兼CEO 寺田彼日氏
AironWorks 共同創業者兼CEO 寺田彼日氏

 同社の創業は2021年8月と誕生して間もないものの、国内企業では数少ないAIを活用した標的型メール訓練を提供していることから、中小企業のほか大手企業からも採用が増えつつある。特にセキュリティ対策が厳しい金融業界では、大手銀行や損害保険会社が導入している。

 メール訓練のソリューションともなると、同社以外にも海外の競合企業が数多く存在する。一方そうした事業者は、海外の事例や環境に基づいた定型の訓練やサービスとなっていることも多く、日本や企業個別の環境に沿っているとは言い難い状況がある。

 そこで同社では、CTOであるゴネン氏が中心となりシステムを開発。AIを活用することで時勢に沿ったメール訓練が可能になっただけでなく、日本国内の状況に合わせたメール訓練が提供可能になったほか、企業個別の状況に合わせた適時性の高いサービスを提供している。

 創業間もない日本発のセキュリティ企業にもかかわらず、大手企業でも同社のソリューションが採用されている背景には、こうした同社が提供しているソリューションのユニークさと、それを担保する共同創業者兼CTOであるゴネン氏の技術力にある。

 「高校卒業後、イスラエルのサイバー部隊である8200部隊に専門技術士官として従事しました。当社が提供しているソリューションは、私が従軍時代に経験したセキュリティオペレーションからフィードバックし、開発しています。特長的な点として、メール訓練に用いる戦略と文面生成にAIを活用し、自動化している点です。時勢にあったメール攻撃や、組織ごとの特徴にあった柔軟な訓練が可能な点が特に評価されていますね」

AironWorks 共同創業者兼CTO ゴネン・クラック氏
AironWorks 共同創業者兼CTO ゴネン・クラック氏

 イスラエルは国民皆兵のため男女ともに徴兵制があるものの、その中でも入ることが難しい8200部隊への入隊は、ゴネン氏本人の意思によるものだったという。

 「その後のキャリアを考えて、希望を出して入隊しました。というのも、優秀かつ多様なバックボーンをもつ人材が若いうちからサイバー部隊に集って技術に関する議論をしたり、コミュニティを育んだりして生まれるネットワークから、その後のキャリアアップにもつながることが大きな魅力でしたね」(ゴネン氏)

 実質イスラエル発ではあるものの、日本のセキュリティ企業として8200部隊出身のイスラエル人技術者とともに創業した新興企業というユニークな特徴をもつ同社。しかし創業者である寺田氏は、ITスタートアップの起業に携わった経験はありながらも、サイバーセキュリティのバックボーンは持ち合わせていない。

 そうした中で、なぜ事業として参入しづらいセキュリティ企業を設立し、さらに優秀なイスラエル人CTOを迎え入れることができたのか。そこには、寺田氏の想いと新卒時に入社したベネッセコーポレーションでの体験があったという。

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覚悟の片道切符、戦火のイスラエルにて企業

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この記事の著者

西隅 秀人(ニシズミ ヒデト)

元EnterpriseZine編集部(2024年3月末退社)

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