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ファイザーが生成AIでコンテンツ作成を75%向上 Adobe Summitで発表

「Adobe Summit 2024」レポート

 企業の競争戦略における顧客体験の重要性が高まる中、顧客接点から提供するコンテンツのパーソナライゼーションの効果はわかっていても、あまりの仕事の多さに現場が回らない課題が顕在化している。この課題を解決するため、先進企業はコンテンツサプライチェーンの整備に取り組み始めた。3月に行われた「Adobe Summit 2024」の基調講演の目玉になったファイザーの事例を紹介する。

大量のコンテンツをタイムリーに提供することが難しかった理由

Pfizer Chief Digital & Technology Officer兼EVPリディア・フォンセカ氏
Pfizer Chief Digital & Technology Officer兼EVPリディア・フォンセカ氏

 WHOによれば、現在、地球上の約5人に1人が一生のうちにがんを発症すると言われている。また、2024年には、米国における新規のがん患者数が200万人を突破する見通しだ。このような背景から、ファイザーはがん治療薬の開発を加速させている。がん治療に特化したバイオテクノロジー企業Seagenを買収したのもその一環である。今後5年間で、ファイザーは25以上の薬事承認の取得と、革新的ながん治療薬の提供を通して、2030年までに同社の医薬品で治療する患者数を倍増させ、世界中のがん患者に希望をもたらすという高い目標を掲げている。

 がんと闘う患者やその家族にとって、一瞬一瞬が大事な時間である。一方で、片頭痛、呼吸器疾患、薬剤耐性、肥満など、他の疾患の苦しみを抱える人々も世界中に何百万人といる。ファイザーにとって、2023年はFDAからの承認が記録的な1年になった。「片頭痛治療のZavzpret、高齢者をRSウイルスから守るAbrysvo、多発性骨髄腫対策のElrefxioなど、9つの化合物が新規承認された他、既存製品の新しい適用に対する承認も多く得られた。ファイザーは、『科学が勝つときは患者が勝つとき』と信じている。また、私たちが成功できるかは、科学への確固としたコミットメントだけでなく、信頼の構築にもかかっている。私は、医療はチームスポーツだと思う」(フォンセカ氏)

 これらの画期的な進歩を、医師や疾患で苦しむ患者に知ってもらうには、わかりやすく関連性のあるコンテンツをタイムリーに提供しなければならない。そうなると、用意しなければならないコンテンツの量は膨大なものになる。「何百もの医薬品1つひとつに対して、病気の予防から、検査、治療、治療後のケア選択肢など、健康へのジャーニーにおけるあらゆる段階で、医師、患者、およびその家族に情報を提供するコンテンツを企画している。制作では、140以上の市場を対象に、様々な言語で、Webサイト、メール、アプリなど、複数のチャネルでコミュニケーションを取れるようにしなければならない」とフォンセカ氏は説明した。

 ここまで大量のコンテンツを用意しなければならないとなれば、クリエイティブエージェンシーの力を借りなくては難しい。しかし、これまでのファイザーでは、コンテンツ制作の多くを複数のエージェンシーに委託していたことから、コンテンツ資産は外部に分散し、資産を効率的に共有、再利用するためのリポジトリーがない状態であった。

コンテンツサプライチェーンでスーパーボウルの広告キャンペーン成功

 ファイザーがアドビをパートナーに選んだのは、この問題を解決しようと考えたためだ。アドビは「Personalization at Scale」と同社が呼ぶ、コンテンツのパーソナライゼーションを大規模かつ効率的に展開できるソリューションを提供する製品群を持っている。ファイザーが着目したのは、コンテンツサプライチェーンの整備である。社内外との非効率的なやり取りを極力減らし、これまでの半分の労力で5倍のコンテンツを低コストで制作することをプロジェクトのゴールに据えて、取り組みに着手した。

 その開始からわずか半年で、ファイザーは新しいコンテンツ制作プロセスを3,800 人のマーケターに適用し、80市場を対象にスピーディなコンテンツ展開が可能になった。2024年には、12件以上の新薬のブランドサイトの立ち上げと、オンラインとオフラインを横断する統合マーケティングキャンペーンの展開を計画している。これまでになかった単一のレポジトリーとして、コンテンツサプライチェーンを支えているのがAdobe Experience Managerである。また、Adobe Workfrontをクリエイティブエージェンシーと制作の進捗状況を共有する環境として役立てている。

 また、AIを活用したコンテンツのレビューと承認の方法の簡素化を試み、メディカルレビューのサイクルタイムが50%短くなり、マーケターとエージェンシーの共同によるコンテンツ制作のスピードも75%速くなった。フォンセカ氏は「患者が自分の置かれている状況を理解し、治療を開始するのが早ければ早いほど、健康への道のりへの復帰が早くなるから」と、スピードの重要性を強調した。また、生成AIを活用し、医師と患者の家族間の会話のために、より高品質でパーソナライズされたメッセージの作成に役立てていることも明かした。

  アドビにとって、ファイザーはドキュメントベースのコンテンツオーサリング機能を使った最初の顧客でもある。この機能を使うことで、マーケターはアドビのブランドサイトを直接更新できるようになった。実際、この機能はスーパーボウルへの広告出稿に貢献したという。毎年2月に行われるNFLの優勝決定戦であるスーパーボウルは、その視聴率の高さからCM放映料は高騰している。ファイザーの出稿は初めてのことで、スーパーボウルの週にキャンペーン動画から獲得した「Let’s Outdo Cancer(がんに打ち勝とう)」サイトのインプレッション数は10億回以上、ビジター数は400万人を超えた。スーパーボウルに出稿した広告は全部で70 を超えたが、その内の11位になった。「新人にしては悪くない結果」とフォンセカ氏は評価した。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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