国家戦略としてのデータインフラ再構築──「1.5兆円投資」が目指すもの

同社 テクノロジーコンサルティング事業本部 テクノロジーコンサルティング事業部 統括部長 渋谷誉人氏
生成AIとHPC(High Performance Computing)の台頭により、データセンター(以下、DC)に求められる性能は劇的に変化している。従来型のサーバーラックでは対応できない高密度な計算処理が必要となり、冷却技術や電力効率の抜本的な見直しが急務となっているのだ。同時に、クラウドネイティブ環境への移行が進む中、経済安全保障やデータ主権という観点がDC事業における重要課題として浮上してきた。
NTTデータは2023年7月に持株会社体制へ移行し、「NTTデータグループ」(持株会社)、「NTTデータ」(国内事業)、「NTT DATA, Inc.」(海外事業)の3社体制で事業を展開している。この体制のもと、国内事業ではSI事業との連携により官公庁・金融機関向けの高信頼性DCサービスを提供。一方、海外事業ではNTT DATA, Inc.傘下のNTTグローバルデータセンター(NTT GDC)を中心に、ハイパースケーラー向けの大規模キャンパス型DCを展開する体制を確立した。

「3社の事業連携による相互のノウハウ活用などを積極的に行っていくことで、"One NTTデータ"としての総合力を発揮していくことが狙いです」とNTTデータグループの進藤数馬室長は説明している。
特に日本国内では、地政学的リスクの上昇や経済安全保障への関心の高まりから、「国内型クラウド&AI基盤」への需要が急増しているのが現状だ。官公庁や金融機関といった高い機密性や信頼性を必要とするセクターでは、自国のデータ主権を確保し国内の法的規制に対応するためのソブリンクラウドの構築も喫緊の課題として認識されている。
地方創生と結びつく分散型インフラ戦略

従来、日本のデータセンター市場は東京圏を中心とした都市集中型の運用が主流だった。しかし近年、地政学的リスクや電力供給制約といった課題から、地方分散型インフラへの移行が業界全体で加速する傾向にある。とりわけ災害大国である日本においては、都市部に一極集中するデータセンター運用はリスクが大きいことも理由だ。
この流れに呼応し、NTTデータは複数の地方拠点で次世代型DCの建設計画を次々と発表している。千葉県白井市(2027年3月竣工予定)や京都府京阪奈(2026年2月竣工予定)、さらに栃木市における大規模データセンター建設プロジェクトなどが進行中である。
これらの施設は単なるリスク分散だけでなく、次世代技術に対応した「スマートDC」としての機能も備える計画となっているのが特徴だ。
進藤氏は次のように語る。「地方分散型のDC展開は、災害リスク低減という側面だけでなく、地域の雇用創出や経済活性化、持続可能な社会インフラの構築を目指すものです」
だが、NTTデータのDC戦略の狙いはこれだけではない。もう1つの重要な課題として、日本企業特有の財務上の課題への対応が挙げられるのである。