企業のROE向上に貢献:DCアセット最適化支援の具体策
NTTデータが推進する1.5兆円の投資計画には、単なる施設拡張を超えた戦略的意図が含まれている。それは同時に、企業としての財務構造を強化し、日本市場が抱える根深い課題に向き合うためのものでもあるのだ。その鍵となるのが、ROE(自己資本利益率)の改善というテーマである。
日本企業におけるROEの低迷は、長年の課題として指摘されてきた。とりわけ、固定資産が自己資本の中で高い比率を占める構造が、ROE改善の妨げとなっている現状がある。この状況は、特にインフラや不動産資産を多く保有する企業で顕著だ。NTTデータのように、全国に自社所有のデータセンターを保有する企業にとっても例外ではない。

こうした課題に対処するため、NTTデータは自社DC資産を経営戦略の一環として最適化する取り組みとして、「顧客向けデータセンター資産最適化支援サービス」を2024年に開始した。このサービスはDCの設備診断、クラウド移行支援、新設施設への移転サポート、さらには不動産売却やリースバックを組み合わせ、企業の財務効率を高めることを目的としている。
NTTデータの渋谷誉人氏(テクノロジーコンサルティング事業本部 統括部長)は、この取り組みを次のように語っている。
「日本企業は、固定資産を多く抱える構造が、財務効率を低下させる一因となっています。私たちは、データセンター資産を通じて、企業が抱えるこうした課題を解決し、ROEを改善するための具体的なソリューションを提供します」(渋谷氏)
このアプローチは財務効率向上だけでなく、事業継続性や災害リスク低減にも大きく寄与するものだ。なぜなら、老朽化施設の最新化は経営リスクを軽減し、ITインフラのDX推進による長期的な競争力強化にもつながるからである。
さらに、財務戦略と並行して、NTTデータは次世代データセンターに不可欠な技術革新にも力を注いでいる。特に生成AI時代に対応する冷却技術と環境対応は、同社の技術戦略における重要な柱となっているのだ。
