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RAGを構築も「低い精度」「社内からの反発」に直面……今や社員3000人が活用、清水建設再挑戦の軌跡

効果的なRAGの構築により見えてきた同社のAIエージェント構想とは

 AI活用において、多くの企業がつまずく課題が「社内への定着化」だ。清水建設 NOVAREイノベーションセンターの古川慧氏は、2025年7月9日に開催された「AI Agent Day 2025」で、同社のRAG(検索拡張生成)システム開発の過程を紹介した。精度を35%から93%へと飛躍させた技術的成果の背後には、社内の反発を乗り越え、AIを「共に働く仲間」として受け入れてもらうための2年にわたる組織変革があった。3,000人規模での全社展開を成し遂げた同社の取り組みは、伝統的産業におけるAI導入の成功モデルとして注目を集めている。

RAGシステムの構築で手痛い失敗

 清水建設は、ダムや橋梁、集合住宅、文化財の復元など、国内外で多様な建設プロジェクトを手がける総合建設会社。麻布台ヒルズ、八ッ場ダム、インドネシアの集合住宅、米子自動車道の船谷川橋、施工中の首里城正殿の復元といった例に見られるように、案件ごとに構造や工法が異なる「一品生産」が同社の特徴だ。さらに、地質や気候、法規制も現場によって大きく異なるため、同一のプロセスを反復できる製造業とは本質的に性質が異なる。

 こうした特性を踏まえて、2023年に同社オリジナルのAIエージェント構想「DAICE(Designers Assistant Intelligence for Creative Enhancement)」が生まれた。この構想では、Artificial Intelligence(人工知能)の「Artificial」をあえて「Assistant」に置き換えている。同社 NOVAREイノベーションセンター AI共創グループ グループコンダクターの古川慧氏は「AIは支配するものではなく、設計者をサポートする仲間という意味を込めた」と説明する。

2023年春に考案した「DAICE」のイメージ(クリックすると拡大します)

 この構想において、重要な役割を果たしているのが同社のRAGシステムだ。DAICEの構想と同時期から開発が始まった同システムは、清水建設のマニュアルや施工技術文書を活用し、社員の質問に対してAIが適切な回答を提供するというもの。今でこそ活用が社内でも浸透しているが、開発から社内導入までには険しい壁が立ちはだかっていたという。

 まず、構築の初期段階で直面した壁が「回答精度」の問題だ。システムの性能評価には約50問の理解度テストが用いられ、評価は「正しい回答ができたか」「適切な文書を参照できたか」の2軸で行われた。テスト結果を見ると、両軸を満たした回答は全体の35%にとどまってしまい、文書の参照は正しかったが回答が不十分だったケースが10%、文書選定自体が誤っていたものが55%を占めていた。「この時点では業務適用できるレベルではなかった」と古川氏は当時を振り返る。

最初に取り組んだRAGシステムの回答精度は不十分だった(クリックすると拡大します)

 精度が伸び悩んだ理由として、第一に挙げられたのが「図面の複雑さ」だった。図中に多重の線や注記が含まれるケースでは、人間でも解釈に時間がかかるものが多く、AIによる正確な読み取りは困難だった。また、数値や単位の扱いにも課題があり、文書内に「ミリ」と「mm」の表記が混在していたり、途中で単位表記が切り替わっていたりしたため、AIがうまく情報を読み取れず誤答を出すケースが頻発したのだという。

 こうした技術的課題に加え、組織的な壁も大きかった。上層部からの理解を事前に得ないままプロジェクトを進めてしまったことにより、設計部門の幹部からは強い反発を受けたという。トップ層の理解を得られず、「未完成のAIを使って業務ミスが起これば顧客に迷惑をかける」として導入を危ぶむ声も根強かった。

 そもそも設計の部署で「勝手に実験することが許されない」といった空気の中、生成AIに対する不信感は想像以上に根深かったという。「トップダウンの傾向が強い建設業において、上層部を巻き込んだ施策を打てなかったことは反省点の1つだ」と古川氏は振り返る。

技術の困難さだけでなく、組織内の壁も存在した(クリックすると拡大します)

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回答精度を高めるために、ゼロから学び直しを実施

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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